小売店や飲食店にも安全管理者や衛生管理者は必要?資格の要件とは

2020.08.25店舗の安全管理
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安全な店舗づくりのためには、まず店舗で働く従業員が安全に働くことができる環境を作る必要があります。快適な職場環境づくりを目的として制定されたのが「労働安全衛生法」です。

労働安全衛生法では、事業場の規模や業種などに応じて「安全管理者」や「衛生管理者」などを選任し配置することを事業者へ義務付けています。では、小売店や飲食店などの店舗では、安全管理者や衛生管理者の選任は必要なのでしょうか。また、安全管理者や衛生管理者になるにはどのような資格が必要なのでしょうか。

今回は、店舗に求められる安全衛生管理体制についてご紹介します。

 

 

安全衛生管理体制とは

事業場の規模が一定以上になると、労働災害を防ぐため安全管理者や衛生管理者の選任が義務付けられます。この組織体制のことを安全衛生管理体制といいます。

では、スーパーやアパレル店などの小売店や、レストラン、カフェ、居酒屋などの飲食店では、従業員が何人以上になると安全管理者などの選任義務が発生するのでしょうか。

 

各種商品小売業(百貨店、総合スーパー等)、家具小売業、燃料小売業の場合

デパートや家具店など、重大な労働災害のリスクが比較的高い店舗の場合は、下記の基準に基づいて選任する必要があります。

 

常時使用する労働者数:10人未満

選任義務なし

 

常時使用する労働者数:10人以上50人未満

安全衛生推進者

常時使用する労働者数:50人以上1,000人未満

安全管理者

衛生管理者

産業医

 

常時使用する労働者数:1,000人以上

総括安全衛生管理者

安全管理者

衛生管理者

産業医

 

食品スーパー、専門店、飲食店などの場合

一般的な食品スーパーやアパレル店、カフェ、レストランなどの場合は、下記の基準に基づいて選任する必要があります。

 

常時使用する労働者数:10人未満

選任義務なし

 

常時使用する労働者数:10人以上50人未満

衛生推進者

 

常時使用する労働者数:50人以上1,000人未満

衛生管理者

産業医

 

常時使用する労働者数:1,000人以上

総括安全衛生管理者

衛生管理者

産業医

 

※常時使用する労働者数のカウントは、企業単位ではなく事業場(店舗や事務所)ごとに行います。また労働者数には、正社員だけでなくアルバイト・パート・派遣社員なども含まれます。

 

総括安全衛生管理者とは

総括安全衛生管理者は、職場の安全衛生に関する最高責任者です。従業員に危険が及んだり健康障害が発生したりすることのないように適切な措置を講じて、実施状況の監督を行います。

 

総括安全衛生管理者の選任要件

事業所における事業実施を統括管理し、責任を有する人間を選任するのが適当とされています。必要な資格や経験は特になく、職歴や役職なども問われません。

 

総括安全衛生管理者の職務

総括安全衛生管理者は、安全管理者や衛生管理者などを指揮し、店舗の安全衛生全般を守ることが求められます。

 

 

安全管理者とは

安全管理者とは、職場の安全についての技術的な事項を管理する立場にある人間のことです。常時使用する労働者数が50人以上のデパートや家具店などでは、この安全管理者の選任義務があります。食品スーパーや飲食店では選任する必要はありません。

 

安全管理者の選任要件

安全管理者には、以下の3つの条件のうちいずれかを満たす従業員を選任する必要があります。

 

1.大学・高等専門学校で理科系統の正規課程を修め、卒業後2年以上産業安全の実務に従事した経験を持つ者や、高校・中学校で理科系統の正規学科を修め、卒業後4年以上産業安全の実務に従事した経験を持つ者の中で、安全管理者選任時研修などの厚生労働大臣が指定した研修を修了した者

2.労働安全コンサルタントの資格を持つ者

3.その他厚生労働大臣が定める者

 

安全管理者の職務

安全管理者は、店舗内での危険や健康障害を未然に防ぐための措置や従業員への安全教育を行うと共に、労働災害が発生した際に原因の調査や再発防止策を講じるなどの役割が求められます。消防訓練や避難訓練も、安全管理者の職務のうちの1つです。

作業場を巡視し、危険を発見した場合には必要な措置を講じる必要がありますが、巡視回数や頻度に関する定めはありません。

 

衛生管理者とは

衛生管理者とは、職場の衛生についての技術的な事項を管理する立場にある人間のことです。常時使用する労働者数が50人以上の事業場では、業種を問わず選任が必要となります。

 

衛生管理者の選任要件

衛生管理者には、以下の条件のうちいずれかを満たす従業員を選任する必要があります。

 

1.第一種/第二種衛生管理者免許を有する者

2.衛生工学衛生管理者免許を有する者

3.医師、歯科医師

4.労働衛生コンサルタントの資格を持つ者

5.その他厚生労働大臣が定める者

 

衛生管理者免許については、建設業や医療業、清掃業などの業種の場合は第一種衛生管理者免許が必要ですが、小売店や飲食店の場合は第二種衛生管理者免許のみでも衛生管理者になることができます。

 

衛生管理者の選任数

選任が必要な衛生管理者の人数は、常時使用する労働者数によって定められています。

 

常時使用する労働者数:50人~200人

1人

 

常時使用する労働者数:201人~500人

2人

 

常時使用する労働者数:501人~1,000人

3人

 

常時使用する労働者数:1,001人~2,000人

4人

 

常時使用する労働者数:2,001人~3,000人

5人

 

常時使用する労働者数:3,001人以上

6人

 

衛生管理者の職務

衛生管理者は健康に異常のある者の発見と処置や、労働者の作業に関する衛生上の調査と改善のほか、救急用具の点検と整備、衛生教育や健康相談の対応などを行います。

また、週1回は職場内を巡視し、設備や作業方法、衛生状態などに有害の恐れがないかどうかを確認し、リスクを発見した場合には健康障害を防ぐために必要な措置を講じることが求められます。

 

産業医とは

産業医とは、事業場で働く労働者の健康管理などの職務を行う医師のことです。常時使用する労働者数が50人以上の事業場では、業種を問わず選任が必要となります。

また、常時使用する労働者数が1,000人以上の事業場や、労働者数が500人以上の業務において重大な危険を伴う業種の事業場などでは、事業場内に常駐する専属の産業医の選任が必要です。また、労働者数が3,000人以上の事業場では2人以上の選任が必要です。

 

安全衛生管理体制に関する疑問・質問

管理者や産業医はいつまでに選任するべき?

総括安全衛生管理者や安全管理者、衛生管理者、産業医は、労働者数が基準に達した日などの「選任すべき事由が発生した日から14日以内」に選任しなくてはなりません。選任後は速やかに所轄の労働基準監督署長へ選任報告書の提出を行う必要があります。

 

管理者や産業医を選任しなかった場合はどうなる?

総括安全衛生管理者や安全管理者、衛生管理者、産業医を選任する必要があるにも関わらず選任をしなかった場合や、選任したものの必要な権限を与えず管理者や産業医としての業務を感染に遂行させなかった場合には、50万円以下の罰金が処せられる可能性があります。

 

安全管理者と衛生管理者は同じ人でもいい?

安全管理者と衛生管理者の兼任については、法的に制限されていないため可能ではあります。ただし、職務量や責任の重さから考えて、兼任での実務遂行は難しいでしょう。できる限り兼任での選任は避け、それぞれ管理者を選任することをおすすめします。

 

まとめ

今回は、店舗における安全管理者や衛生管理者などの安全衛生管理体制についてご紹介しました。

食品スーパーやアパレル店、雑貨店などの小売店や、レストラン、カフェなどの飲食店でも、従業員数によっては衛生管理者や産業医の選任が必要となります。百貨店などの複合施設の場合は、安全管理者の選任も必要です。

従業員の数に応じて各管理者などの選任を行い、店舗の安全衛生を守りましょう。

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タグ : 衛生管理者 安全管理者 資格
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