飲食店などの店舗が入っておくべき「施設賠償責任保険」とは

2020.04.24店舗の安全管理
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万が一店舗で事故が発生した場合、店舗側は責任を取って、被害を受けたお客様に多額の損害賠償金を支払わなければなりません。

お客様から損害賠償請求を受けたときの備えとなるのが、施設賠償責任保険です。施設賠償責任保険は、事故が発生した際の経済的な損失をカバーしてくれる、店舗にとって心強い保険です。今回は、飲食店などの店舗が入っておくべき施設賠償責任保険とは何かをご説明します。

 

施設賠償責任保険とは?

施設賠償責任保険とは、店舗内の不備や欠陥が原因で何らかの事故が起き、お客様への損害賠償責任が発生した場合に利用できる保険です。高額になりやすい損害賠償金などが補償されるため、飲食店や小売店などの店舗を経営する人にとっては欠かせない保険です。施設賠償責任保険はお客様と接する小売店だけではなく、商品を管理する倉庫や製造する工場なども対象になります。

 

飲食店などの店舗に施設賠償責任保険が必要な理由

では、どうして飲食店などの店舗は施設賠償責任保険に加入しておくべきなのでしょうか。加入していないとどのようなデメリットがあるのかなどについて見ていきましょう。

 

基本的に、店舗に限らず不特定多数が出入りする建物内では、どのような事故が起こるか分かりません。積み上げていた荷物が崩れたり、高い場所に置いている割れ物が落下したり、飲食店であれば熱い料理をサーブ中のスタッフがお客様とぶつかりやけどを負わせるなど、さまざまな事故が考えられます。また、火災や水漏れなどが起きた場合は、隣接する店舗に損害を与える可能性もあります。

これらのようなトラブルが起こったとき、施設賠償責任保険に加入していなければ全責任を店舗(経営者)が負うことになるでしょう。被害額は数十万で済むこともあれば、規模によれば数百万、数千万円にも上るかもしれません。

損害賠償額が支払い能力を超えていた場合、つまり支払えない金額の場合はどうすることもできません。迷惑をかけたお客様にも誠意を示すことができませんし、経営者としても窮地に追いやられることになってしまうのです。

店舗で起きた事故は経営者自身だけでなく怪我をさせたお客様、従業員、近隣の店舗の方など多数の人に被害を与えます。施設賠償責任保険は保険料が比較的安いことも特徴の1つのため、万が一の事故による賠償のことを想定すると、必ず加入しておきたい保険だといえるでしょう。

 

施設賠償責任保険でカバーできる事故

施設賠償責任保険は店舗にとって必要性の高い保険ですが、店舗で起きたすべての事故をカバーできるわけではないため注意が必要です。施設賠償責任保険の保険料が支払われるケースとしては、以下のような事例があげられます。

 

店舗施設での欠陥や管理不備による事故

店舗看板の落下

店舗の入り口付近や駐車場などに設置している看板が落下した場合、お客様や通行人の方が怪我をする可能性があります。高いところに設置されている大きな看板が落下すると、軽傷では済まない大事故になることも考えられます。

看板は長年使用しているとネジがサビてきたり、屋外で風雨にさらされているため老朽化が進みやすい部分の1つです。営業中に気をつけていれば防げるものでもないため、普段から異常がないかをチェックしていなければ気付かない箇所かもしれません。

 

陳列商品の落下

店内に陳列中の商品が落下した場合、お客様が怪我をする可能性があります。平台などに大量に置かれたセール品やコーナーに設置された商品、高いところに置かれた商品やストック品などは、お客様が接触した拍子に落下することが想定されるでしょう。

店舗によっては小さなお子様が走り回っていることもあります。大人であれば大した怪我につながらなくても、子どもは大怪我をするかもしれません。訪れるあらゆる客層に起こり得る事故を想定することが必要です。

 

スタッフが業務を遂行中に起こした事故

商品を運んでいる台車と接触

スタッフが台車で商品を運んでいる際にお客様と接触した場合、お客様に怪我を負わせてしまうことになります。コーナーを曲がる際にお客様の存在に気付かない可能性もありますし、商品をたくさん載せて台車が重たくなっている場合、大怪我につながるかもしれません。

 

スタッフによる誤った通報

発生頻度としては多くはないかもしれませんが、店内でトラブルがあったときにスタッフが勘違いをして通報してしまい、お客様が取り調べを受けることも考えられます。取り調べが原因でもしお客様が仕事を休まなければならない場合、休業補償を請求されることもあります。

 

施設賠償責任保険の保険金支払い対象の範囲

上記でご紹介したような事故が発生した場合、お客様への損害賠償金も含めてさまざまな費用が必要です。

 

【具体的に発生する費用】

・被害者であるお客様に支払うべき損害賠償金

・応急手当や護送などに必要な緊急措置費用

・弁護士報酬など訴訟にまつわる訴訟費用 など

 

施設賠償責任保険に加入していた場合、損害賠償金だけではなく上記の費用すべてが支払われます。保険によってはさまざまな特約があり、通常の保険内容ではカバーされないケースの費用も補償してくれる場合もあります。

どのようなケースに対応しているか、損害賠償責任の有無が問われるかどうか、支払限度額や回数はどの程度かなどは、加入している保険会社やオプションの有無によって異なるため、十分理解してから検討することをおすすめします。

 

施設賠償責任保険ではカバーできない事故

店内で起こり得る事故の中には、施設賠償責任保険では補償されないものもあります。具体的に見ていきましょう。

 

店舗で取り扱った商品や食品が原因の事故

食中毒

販売した食品の鮮度に問題があり、お客様が食中毒を起こした場合などは施設の不備・欠陥とはみなされないため、保険の対象外となります。

 

商品の不備

店舗で組み立て販売した自転車に不備があり、乗っていた子どもが怪我をした場合などもあくまでも商品の不備なので保険の対象外になります。

 

上記のようなケースの場合は、施設賠償責任保険では補償されません。しかし、上記のトラブルは生産物賠償責任保険という保険ではカバーできる範囲のものです。万全を期すためには、施設賠償責任保険のほかにも生産物賠償責任保険に加入しておくとなお良いでしょう。

 

保険で信用は守れない!やはり事故予防対策が重要

施設賠償責任保険は、万が一の事故の際に経済的負担を軽減し、店舗の経営を守ってくれる保険です。しかし、お客様に損害賠償責任が発生するような事故が起こった時点で、店舗の評判は大きく下がることとなります。1度失った信用を取り戻すには、長い時間がかかってしまいます。

施設賠償責任保険は事故で起きた損害はカバーしてくれますが、店舗の信用を守ることはできません。万が一に備えて保険に加入することも大切ですが、事故を予防する安全対策を併せて実施していくことが重要です。

 

まとめ

施設賠償責任保険は店舗内、事業所内で起こるさまざまな事故における損害賠償をカバーする保険です。ただし、基本的には建物の管理上の欠陥や不備、仕事中の従業員が起こした事故などが補償対象になります。あらゆる事故において補償されるわけではないので、ご注意ください。

また店舗の信用を守るためには、お客様の安全を第一に考えた事故予防対策が何よりも重要です。「安心して買い物を楽しめる」という信用は、万全な安全対策によって成り立ちます。

取り扱う商品や食品の管理徹底はもちろん、安全な売場作りやスタッフの教育など、事故を未然に防ぐための対策にはさまざまなものがあります。店舗にどのようなリスクが潜んでいるのか、今1度見直してみましょう。

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タグ : 子供 水難事故 初めての海水浴
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