松葉杖だと買い物ができない?階段が怖い!松葉杖のお客様が感じる不便さとは
2020.05.05店舗の安全管理店舗にはさまざまなお客様がいらっしゃいます。そのなかには、松葉杖を使うお客様の姿も。松葉杖を使っているお客様にとっては、一見安全に見える店内にも事故につながる危険がたくさんあります。お客様を丁寧にもてなし、店内での事故を予防するためには「松葉杖を使用している人の不便さ」を理解することが重要です。
今回は、松葉杖をご利用のお客様に対して店舗ができるサポートについてご紹介します。
まずは松葉杖の基礎知識を知ろう
松葉杖といえば、骨折、捻挫、肉離れなどの怪我をした人が、怪我が治るまでの期間だけ使用するものというイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。実は、松葉杖は怪我人以外の方が利用しているケースもあります。
ここでは、松葉杖をご利用のお客様が感じる不便さを理解するために知っておきたい、松葉杖の役割や歩法などの基礎知識をご紹介します。
松葉杖とは
松葉杖とは、脇あてが付いていてその下にグリップがある杖のことを指します。松葉杖を使うことで、足に怪我などをしていてうまく歩けない場合でも安定した歩行が可能です。上半身の筋肉を使うため、上半身は健常であることが求められますが、高齢者の方でも十分使用できます。
松葉杖の役割
松葉杖の主な役割は、「身体を支える支点を増やして、安定して歩けるようにし、転倒などの事故を予防すること」です。骨折など足を自由に動かせないほどの怪我をしたときに使用するイメージがありますが、「足腰への負担を減らす」といった目的で松葉杖が使用される場合もあります。脚・腰などに痛みやトラブルを抱える高齢者の方の歩行もサポートします。
松葉杖を使った歩法の種類
松葉杖を使用した歩行には、いくつかの方法があります。
歩行することがそこまで困難でない場合には、「二点歩法」という、右足と左杖、左足と右杖と、交互に支えながら歩く方法をとります。
両足が不自由な場合は、松葉杖を前方につき、両足で地面を支えつつ前に出しながら移動する「同時引き摺り歩法」で歩きます。
左右どちらかの足が使えない場合は、使用可能な方の足と2本の松葉杖で歩行する、「三点歩法」で歩きます。
松葉杖を使った歩き方・階段の上り下りの仕方
ここでは、左足が使用できないときを例に、その歩き方と階段の上り下りの仕方をご紹介します。使用する松葉杖は2本です。
歩き方
まず、脇の下を支点にして、松葉杖の先を前に出します。松葉杖を脇に入れて体重をかけ、持ち手を握ります。最後に、右足を前に出します。この動作を繰り返して歩きます。
階段の登り方
まず、両手で松葉杖をしっかりと支えて、右足を上の段に上げます。その後、右足で支えて松葉杖と左足を上の段に上げます。この動作を繰り返して登っていきます。
階段の降り方
まず、松葉杖と左足を、右足で支えながら下の段に降ろします。その後、松葉杖で体重を支えつつ、右足を降ろします。
松葉杖のお客様が買い物中に感じる不便さ
松葉杖をご利用のお客様は、買い物中のさまざまな場面で不便さを感じます。具体的にどのようなことで苦労されるのか、見ていきましょう。
手が松葉杖でふさがっているため商品やカゴが持てない
松葉杖を2本使用している場合、歩くために両手を使っているので何かを持つことが非常に困難になります。そのため、買い物のために歩くことはできても商品を手に取ってレジまで持っていくことがとても難しいのです。もちろん買い物カゴを持つこともできないため、誰かの手助けがない限り複数商品の買い物をすることは難しいといえるでしょう。
幅が狭い通路を通れない
松葉杖を使って安定して歩行するには、ある程度の幅が必要です。健常な方であれば難なく歩ける場所でも、松葉杖では通れないこともあります。普段は通れる幅であっても、品出しのための台車が置かれていたり、他のお客様の買い物カゴが放置されていたり、障害物があることで通れなくなっているケースもあるかもしれません。
階段の上り下りが怖い・時間がかかる・疲れる
買い物中に限らず、松葉杖の使用者を大きく悩ませるものの1つが階段の上り下りです。1つずつゆっくりと上り下りするため時間がかかりますし、脚ではなく上半身の筋肉を使うためかなり疲れます。スムーズに動けないために恐怖心も芽生えてしまいますし、踏み外した場合に怪我を悪化させる可能性もあります。松葉杖での階段の上り下りは、周りが思っている以上に大変なことなのです。
床面の些細な不備によって転倒することがある
松葉杖では床を押しながら前に進むため、床に何かしらの障害物や不備があった場合、体を支えきれずに転倒する危険性があります。一般的には障害物とは感じないようなものでも、松葉杖をご利用のお客様にとっては転倒の原因になりえるのです。
以下に、詳しい転倒事故の事例をご紹介します。
松葉杖のお客様の売場での事故事例
床に貼られたテープにつまずき転倒
あるスーパーで買い物中のお客様が松葉杖で歩いていたところ、床から剥がれかけていたテープで滑り、転倒しました。大事には至りませんでしたが、些細なことでも松葉杖の利用者には危険要素になることが分かります。
上記のように床に残されたテープなどの他にも、鮮魚コーナーや冷凍食品コーナー周辺では床が濡れている可能性がありますし、野菜クズなどもつまずきの原因になるかもしれません。
特に雨の日はただでさえ滑りやすくなっているため、松葉杖をご利用のお客様にとってはより転倒の危険性が増します。
松葉杖のお客様の不便を解消するために店舗でできるサポート
松葉杖を使用しながらの歩行はかなり不安定な状態になります。そのため、床や階段が滑りやすくなってしまっていたり、通路が狭く歩きにくくなってしまっていたりすると、松葉杖をご利用のお客様がバランスを崩し、転倒してしまう事故が起きてしまう可能性が大いにあります。
そのような事故を予防するためには、常に店舗の安全状況に気を配っておく必要があります。床が濡れてしまっていないか、店内の通路は狭くなってしまっていないか、などのチェックを普段から行っていることが事故の予防につながります。
実際に松葉杖をご利用のお客様が来店された際には、「何かお手伝いできることがあればすぐにお申し付けくださいね」と声かけを行うなどの小さな気配りで、安心して店内での時間を過ごしていただけることでしょう。その他にも、お客様の進行方向に障害物があればどかす、階段の上り下りを見守る、などの手助けをするようにしましょう。
まとめ
松葉杖をご利用のお客様にとっては、外出や買い物は想像以上に大変なものです。床に少しでも障害物があれば転倒の恐れがありますし、松葉杖を2本使っている場合は商品を持つことすら困難です。
店舗内では、あらゆるお客様が快適に買い物できるような売場づくりが求められます。松葉杖をご利用のお客様にも安心して買い物をしていただくため、売場の安全対策には十分気を配りましょう。