飲食店などでの消火器設置基準と、設置時に知りたい処分・点検などの注意点

2020.04.03店舗の安全管理
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飲食店は火を扱うことが多いため、火災の危険性は高いといえます。2016年に新潟で発生した、140棟以上もの住宅や店舗が延焼した大規模な火災も、飲食店からの出火が原因でした。

この新潟での火災を受けて消防法施行令が改正され、多くの飲食店で2019年10月から消火器具の設置が義務化されました。

 

火災の際の安全対策を自分たちで意識することで、大きな被害が出る前に対処することができます。飲食店だけでなく、ほかのさまざまな店舗についても同じことです。

しかし、これまで消火器を扱ったことがない方は、消火器の種類や設置基準、点検や処分などの注意点などについて詳しく知らないことがほとんどでしょう。

そこで今回は、飲食店や他業種の店舗での消火器設置基準と、店舗の安全対策として消火器を設置する際に知っておくべきことをご紹介します。

 

消火器の設置基準とは?設置義務がある施設は?

冒頭でも触れたように、一部の飲食店でもすでに消火器具の設置が義務化されています。消火器具とは、消火器と簡易消火用具(バケツや乾燥砂など)の総称です。

「一部の飲食店」と書いたとおり、すべての飲食店で設置義務があるわけではなく、店舗内の設備の有無などによって義務があるかどうかが決められています。

 

では、設置義務があるのはどのような飲食店なのでしょうか。また、飲食店以外では、どんな施設で消火器の設置が義務化されているのでしょうか。しっかりと安全対策を行うためには、消火器の設置基準について知っておく必要があります。

 

飲食店での消火器設置基準

消火器の設置義務がある飲食店としての前提条件が、「調理を目的とした火を使用する設備又は器具を設けていること」です。この条件に該当しない場合は、消火器の設置義務はありません。

上記に該当する場合には、さらに以下の3つの条件に当てはまるかどうかを確認します。

 

1.調理油過熱防止装置が付いている

2.自動消火装置が付いている

3.圧力感知安全装置などのように、危険な状態を防止するとともに発生時に被害を抑える装置が付いている

 

上記3つが当てはまる場合にも消火器の設置義務はありません。つまり、設置義務があるのは火を使う調理器具や設備を設置していて、上記3つの条件に該当しない飲食店ということになります。設置に加えて、消火器の点検・報告も義務になることにも注意が必要です。

 

ちなみに、火を使用する設備であっても調理を目的としないもの(こたつやストーブなど)は対象としていません。また、調理器具や設備でも火を使用しないもの(IHクッキングヒーターや電子レンジなど)であれば対象になりません。

 

基本的にはこれまでご説明したことが、飲食店での消火器設置義務の基準ですが、消防法施行令に該当しなくても自治体の火災予防条例等によっては消火器具の設置を求められる場合もあります。

詳細はお近くの消防署に問い合わせてみてください。

 

飲食店以外の消火器の設置が必要な施設

無条件で消火器が必要な施設としては、劇場や映画館、キャバレー、ナイトクラブ、ダンスホール、カラオケボックス、地下街、重要文化財、特別養護老人ホームなどがあります。火災に気づきにくい場所や閉鎖的な空間、歴史的価値のある場所などが主に当てはまります。

 

施設の面積によって設置義務の有無が変わる施設

上記以外の建物は、延べ面積によって設置義務の有無が変わります。

例えば公会堂や主会場、百貨店、物品販売を行う店舗、寄宿舎、病院、ホテルなどは、延べ面積が150平方メートル以上であれば設置の義務があります。また、学校やそれに類するもの、図書館、博物館、美術館、船舶や航空機の発着場、寺社や教会などの宗教関連施設などは、延べ面積が300平方メートル以上であれば設置の義務があります。

 

必要な消火器の本数は?

消火器は、1本だけ置いておけばいいというものではありません。消火器を何本設置するべきかは、消火器の能力や想定する火災の種類、建物の構造などによって変わります。

 

火災は3種類に大別され、一般的な火災をA火災、油による火災をB火災、電気による火災をC火災といいます。一般的には、A火災に対する能力を基準にして消火器の設置本数を決めます。

 

例えば上述した延べ面積150平方メートル以上で設置義務が発生する建物の場合、耐火構造でない場合は100平方メートルに対して消火能力が1単位必要となります。この建物の延べ面積が500平方メートルであった場合、必要な消化能力の単位は5単位です。仮にA火災の消化能力が3の消火器を設置する場合には、5単位を超えるように2本設置する必要があります。

 

消火器の種類と選び方

消火器は、対応している火災の種類や薬剤の違いなどによっていくつかの種類に分かれます。

 

A.木材や紙などの火災

B.石油など油類による火災

C.電気設備による火災

 

と対応火災によって3種類に大別され、さらに粉末系・水系・ガス系と薬剤の種類によってさまざまなものがあります。想定される火災に合わせて消火器を選びましょう。例えば、天ぷら油を日常的に使用する飲食店では、火事が発生した際に延焼が大規模になることが想定されるため、適切な消火性能を持った、できるだけ消火能力の高いものを選ぶことが基本です。

 

消火器設置の際の注意点

消火器を設置する場合、いくつか注意点があります。

 

消火器の設置場所

ひとつめの注意点は、通行や避難の邪魔にならず、すぐ持ち出せる場所に設置するということです。ただし火災の際に持ち出しやすい場所であっても、避難の妨げになる場所には設置してはいけません。

 

また、設置の際には想定される防火対象物から20m以内で、なおかつ床面から1.5m以下に設置する必要があります。この際、見やすい位置に消火器の標識を取り付けます。

 

このほか、高温多湿や日光・潮風・風雨に晒される場所は避ける必要があります。

 

消火器の設置方法

設置については、「地震などの振動によって倒れないようにする」といった注意点もあります。倒れにくくするためには、消火器設置台(消火器スタンド)を使用するのが良いでしょう。

 

消火器設置後の注意点

消火器は購入して設置すればおわり、というものではありません。消火器を設置した後にはいくつか注意点があります。

 

消火器設置届の提出が必要

消火器を設置すると、「消防用設備等(特殊消防用設備等)設置届書」という書類を消防本部予防課に提出する必要があります。ただし、この設置届には専門的な内容も多く含まれている上、消防設備士の資格がないと記入できない欄もあります。

詳しくは消火器を購入する際に業者に問い合わせてみてください。

 

定期的に点検・報告の実施を

消火器の設置後、定期的な点検・報告作業が必要になります。

具体的には、6カ月に1回以上、

 

・設置状況

・消火器の外形

・消火器の内部および性能

・消火器の耐圧性能

 

の4点について点検することが義務付けられています。

 

建物が消防法施行令第36条に定められている「防火対象物」に該当する場合は、点検作業は乙種第6類消防設備士または第一種消防設備点検資格者でなければ実施できません。

延べ面積1,000平方メートル未満で、階段が建物の内部に2つ以上ある建物や、3階以上の階または地下階に飲食店や物販店などの不特定多数の人が出入りする店舗がない建物であれば、有資格者以外でも点検が可能です。ただし、万全を期すのであれば点検会社などに依頼してしっかりとチェックをしてもらったほうが良いでしょう。

また、点検内容は管轄の消防署への報告が必要です。

 

期限が切れたら交換・処分を

耐用年数を過ぎているものや、痛みが激しいものは適切な方法で処分します。特定の業者に回収してもらえば、消火器1本のうちおよそ9割の部分がリサイクルされます。効率的な資源のサイクルを回すためにも、消火器は正しい方法で処分しましょう。

 

処分方法は、以下の3種類です。

1.特定窓口にて引き取りを依頼

2.特定窓口または指定取引場所に直接持ち込む

3.ゆうパックでの回収(法人は利用できません)

 

ゆうパックは個人しか申し込みできないため、法人の場合は1か2のいずれかの方法になります。

 

ただし、回収対象は国内で製造された消火器のみです。外国製の消火器やエアゾール式消火具などは回収対象にはならないため注意してください。

 

まとめ

火災に対する店舗の安全対策として、消火器の設置は効果的です。設置の義務がない店舗であっても自主的に設置することはできるため、安全対策が不安という場合には消火器の設置を検討してみてはいかがでしょうか。

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タグ : 飲食店 消火器 処分 設置基準
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