店舗のバリアフリーとは?バリアフリーを考えた店舗作りのポイント

2020.06.03店舗の安全管理
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お客様が安心・安全に利用できるよう、近年は積極的にバリアフリー化に取り組む店舗が増えています。障害者や高齢者の方だけでなく、すべてのお客様がストレスなく快適に利用できるということは店舗にとっても重要なポイントです。

今回は、バリアフリーの定義についてご説明し、店舗内外のスペースや注文・会計時などのバリアフリー対策のポイントについてご紹介します。

バリアフリーとは?

店舗のバリアフリー化を進めるにあたっては、まず「バリアフリー」とはどのようなことなのかを正しく理解することが必要です。

バリアフリーとは、「バリア=障壁」を「フリー=のぞく」という意味で、高齢者や障害者、乳幼児を連れた方や病気を抱えた方などにとっての障壁となる物理的・心理的なバリアを取りのぞくための対策や取り組みを指しています。

日本でも1990年代ごろから急速に注目され始め、特に店舗や商業施設などの空間設計において重要視されるコンセプトとなっています。

 

4つのバリアとは?

取りのぞくべきバリアには4つの種類があります。4つのバリアとは、「物理的なバリア」「制度面なバリア」「文化・情報面でのバリア」「意識上のバリア」のことです。

 

物理的なバリア

障害者の方が移動をする際の障害となる、段差や障害物などの物理的な障壁のことです。狭すぎる通路や滑りやすくなっている床、車椅子に座ったままでは届かない呼び出しボタンや消毒液ポンプなども、物理的なバリアとなります。

4つのバリアの中でもっともイメージしやすいのが、物理的なバリアでしょう。

 

制度面なバリア

社会的な制度や店舗のルールなどによって、平等であるはずの機会が奪われることを指します。例えば、ペットの入店が不可となっている飲食店で盲導犬との入店を断られるなどの例が、この制度的なバリアにあたります。

そのほか、就職・入学試験において障害者であることを理由に受験ができないなどのケースがあります。

 

文化・情報面でのバリア

文化・情報面でのバリアとは、情報を得る際に困難を感じる状況のことです。聴覚障害のある方には、音声アナウンスの案内は届きません。また、視覚障害のある方にとっては、ポスターでの文字や絵による警告は意味をなしません。このような聴覚・視覚に頼った案内のみだと、障害をお持ちの方には情報が伝わらない可能性があります。

 

意識上のバリア

障害者に対する差別や偏見といった心の壁のことです。障害について無関心なことや、必要以上に同情的に見ることも、意識上のバリアとなります。

健常者の買い物客が駐車場の優先スペースに駐車したり、多機能トイレを利用したりしてしまうといった行動は、障害に対する無関心・無知が招くものです。店舗のバリアフリー化を進めるにあたっては、設備の充実や対応のマニュアル化などだけではなく、一般客への協力を求めるための周知も必要だといえます。

 

ユニバーサルデザインとの違いとは?

バリアフリーと似た言葉で、ユニバーサルデザインという言葉も聞いたことがあるかもしれません。この2つの違いは、対象となる人物です。

バリアフリーは、基本的に障害をお持ちの方が対象です。一方でユニバーサルデザインは、障害の有無や年齢、国籍、性別などにかかわらずすべての人が使いやすいデザインのことを指し、対象は全員です。

店舗のバリアフリー化を進めるメリット


店舗をバリアフリー化させることで、障害をお持ちの方を含め、多くの方に気持ちよく過ごしていただけます。車椅子や障害を持った方が利用できる店舗は多くないため、安心してできる店舗があれば障害者の方の間で口コミが広がり利用者が増えるでしょう。

また、バリアフリー化していることで、現在障害を持っていない方にも「怪我や病気で体が思うように動かなくなったときも安心して来店し続けることができる」という安心感を持っていただくことができます。

店舗のバリアフリー化のメリットは、お客様が快適に過ごせることだけではありません。店舗側にも、お客様の新規獲得や固定化につながるというメリットがあるのです。

店舗のバリアフリー化のためのポイント

バリアフリー化の取り組みには、さまざまなものがあります。代表的なものとしては、以下のような対策があげられます。

駐車スペース


・できるだけ店舗に近い場所に障害者等用駐車スペースを設置

・安全に乗り降りできる充分なスペースを障害者等用駐車スペースの左右両サイドに確保

店舗の出入口

・車椅子やベビーカーを利用されるお客様がほかのお客様と安全にすれ違うことができる広さを確保(幅は180cm以上が望ましい)

・段差がある場合にはスロープを設置

・出入口付近に商品や自転車などのものは置かない

・ドアは車椅子利用者の方などが安全に使用できるよう自動ドアやスライド式にする

・聴覚障害をお持ちの方でも分かりやすいようにドアの開閉時に音が鳴るようにする

店舗内の通路

・車椅子やベビーカーをご利用のお客様でも無理なく安全に移動できるよう通路幅は充分な

広さを確保(幅は90cm以上が望ましい)

・店舗内に段差がある場合はスロープを設置

・スロープ部の色をほかの床とは変えて区別しやすくする

・転倒の原因になるため、商品やかごなどのものを通路に置かない

座席・休憩スペース

・椅子は車椅子利用者の方のスペースを確保できるよう、移動できる椅子(固定されていないもの)を設置する

・テーブルは車椅子利用者の方の膝や前輪がぶつからないものを選ぶ

トイレ

・車椅子利用者の方でもゆったりと使用できるスペースを確保

・便器や洗面器周りに手すりを設置

・鏡や洗面台は車椅子利用者の方でも利用しやすいよう低い位置に別途設置
店舗のバリアフリー化にはコストがかかりますが、行政によっては改修工事の助成金を利用できる場合があるのでぜひご検討ください。

注文や会計時のバリアフリー化


店舗のバリアフリー化は設備などのハード面だけでなく、注文や会計時などのソフト面のサービスに関しても対策が求められています。

注文時

視覚に障害のあるお客様の場合は、直接ご本人に話しかけ、声に出してメニューを読み上げます。

可能なら点字メニューを用意しましょう。点字の印刷に対応している印刷会社や点訳(点字翻訳)を行っているボランティア団体などが地域にあれば、スムーズに作成ができます。大手飲食チェーンなどの点字メニューを参考にするのも良いでしょう。通常のメニュー表にSPコードなどの音声コードを印刷するのも一案です。

聴覚に障害のあるお客様の場合には、見るだけで内容が理解でき、指さしだけで注文できる写真入りのメニューを用意すると役立ちます。筆談できるコミュニケーションボードやスケッチブックなどを準備しておくのもおすすめです。

会計時

視覚に障害のあるお客様の場合は、商品やメニュー名と金額、合計金額などを声に出して読み上げ、代金を受け取る際にも受け取った金額とお釣りの金額を声に出して伝えます。

聴覚に障害のあるお客様には、合計金額やレジの表示を電卓やメモを使って視覚的に伝える工夫が必要です。

店舗のバリアフリーに役立つ「サービス介助士」の資格とは?


店舗の設備や注文・会計時の対応などの対策に加えて、すべてのお客様により良いサービスを提供するために、店舗の従業員が「サービス介助士」の資格を取得することもおすすめです。

サービス介助士とは、障害者の方や高齢者の方のための介助方法や、接し方など知識を学ぶ資格です。この資格は飲食店やデパートなどの接客業でも活用できます。従業員が介助の方法を知っていれば、障害をお持ちの方や高齢者の方は安心してお店を利用できるでしょう。

まとめ

車椅子の方や障害をお持ちの方は、バリアフリー化が進んでいないお店には入りにくく感じます。そこで、車椅子の方や障害をお持ちの方であっても快適に過ごせるように、店舗のバリアフリー化が大切です。

障害の有無に関わらず、誰もが利用しやすい店舗を目指してみてはいかがでしょうか。

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タグ : 店舗 バリアフリーとは
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