バックヤードの荷物用エレベーター、安全性は大丈夫?
2019.04.22店舗の安全管理店舗の規模によって、バックヤードや倉庫などに、従業員用のエレベーターや荷物用のエレベーターを設置している店舗も多いのではないでしょうか。お客様が利用するわけではないエレベーターは、古くなって故障などが多くなってもそのまま使い続けたり、点検や整備の回数が少なかったり、何かと疎かにされがちです。しかし、重大な事故が起こっては大変です。従業員用・荷物用のエレベーターの安全性をしっかりと確かめましょう。
安全管理が疎かにされがちな荷物用エレベーター
バックヤードや倉庫に設置されているエレベーターは、たいてい荷物用か、人と荷物の両方を運ぶ人荷共用のエレベーターです。人荷共用のエレベーターは一般の乗用エレベーターと取り扱いは同じですが、荷物用エレベーターは荷物の輸送を目的としており、荷物を運ぶ人または、エレベーターの運転者以外の人の乗り込みは不可となっています。
エレベーターは建築基準法と労働安全衛生法により、それぞれ年に1回、有資格者による定期点検を受けることが定められています。さらに、安全のために月に1回以上、異常がないかどうかの保守点検を受けることが奨励されています。
とはいえ、お客様用ではないバックヤードのエレベーターは、点検を疎かにされがちです。店舗によっては保守点検どころか定期点検すら長い間行われていない場合もあり、安全管理に不安が残ったまま使い続けているケースもあります。
荷物用エレベーターの種類は?
では、荷物用のエレベーターにはどのような種類があるのでしょうか。ここでは、荷物用エレベーターの種類についてご紹介します。
ロープ式タイプ
ロープ式は、エレベーターの主流タイプです。電動モーターでカゴを昇降、速度が出やすいため、スムーズな運搬が可能です。
油圧式タイプ
油圧タイプのエレベーターは、油の力で持ち上げる装置を利用して、カゴを昇降させます。ロープ式と比較するとゆるやかな動きではありますが、荷重量のある荷物を運ぶのに適しているタイプです。
油圧式には、建物に機械室を設けなくても良いというメリットがありました。しかし、現在はロープ式も機械室レスで設置が可能になっているため、油圧式よりもロープ式が多い傾向にあります。油圧式は、新規製造を行っていないなどの理由から、油圧式からロープ式へと変える店舗も多いようです。
小荷物専用タイプ
小さな荷物を運ぶ際に利用する荷物用のエレベーターです。台車を乗せたまま利用できるフロアタイプと、人の腰くらいの高さに出入口があるテーブルタイプがあります。
商品の運搬はもちろん、飲食店でも食事を運ぶために利用されています。小型のエレベーターのため、乗せられるのは荷物のみで、人が乗ることはできません。
ドアにも種類がある
エレベーターには、横開き式または押上式のドアがあります。
押上式は、大型エレベーターに適しているため、大きい荷物用エレベーターに多い種類です。横開きは一般的によくみるエレベーターのドア方式で小さめの荷物用エレベーターから中型タイプのエレベーターに使用されています。
正しい使用ができているか?重大な事故を予防しよう
バックヤードや倉庫などで使われる荷物用エレベーターでは、たびたび事故が発生しています。お客様用の乗用エレベーターとは異なり、荷物の輸送などの業務に使用される荷物用エレベーターは安全性より実用性が優先される傾向にあります。扉の安全スイッチを切って使用したり、重量規定を守らずに利用したりと、正しい使用方法が守られていない場合も。
その結果、カゴが到着する前に扉を開いて転落してしまったり、扉に挟まれて大怪我をしたりと、従業員が大きな事故に巻き込まれてしまうケースが発生しています。エレベーターでの転落や挟まれ事故は、死亡事故にも発展する可能性のある重大なものが多く、従業員の労働安全を守るためにも、エレベーターの安全管理は重要です。
エレベーターの故障の初期段階では、「停止する際、カゴが上下に揺れる」「出入口に段差がある」「操作ボタンの反応が鈍い」、「異音がする」などの症状が前兆としてあらわれる場合があります。こうした症状があらわれた場合には、定期点検の時期かどうかに限らず、点検や整備を受けるようにしましょう。
エレベーター事故を防ぐためには、定期点検や保守点検をきちんと受け、異常がないかどうかを常にチェックしておくことが大切です。
しかし最も重要なのは、エレベーターの正しい使用方法を守ることです。店舗ではエレベーターの点検・整備をきちんと行うとともに、正しい使用がされているかどうかといったチェックもきちんと行い、必要であれば研修や注意喚起を行うことが大切です。
荷物用エレベーター計画時の確認ポイント
荷物用エレベーターの設置を計画している場合、いくつか確認すべきポイントがあります。事故予防・安全を守るためにも大切なことなので、荷物用エレベーターの設置を予定している場合はあらかじめ確認しておきましょう。
【1】積載荷重の確認
積載荷重は、エレベーター製品によって異なります。許容値を超えてしまうと、荷物用エレベーターを設置しても利用できない可能性も。利用できたとしても大きな事故につながる恐れもあるため、積載荷重の確認は大切です。
普段荷物を運ぶ際どれくらいの重量なのか、荷物用エレベーターの許容値を超えないか事前に把握しておきましょう。
また、フォークリフトを利用して運搬作業をしている場合、フォークリフトもエレベーターに乗せる必要があります。このような場合は、フォークリフトを乗せた分の荷重も計算しなければなりません。フォークリフトを利用している場合は、フォークリフトの搭乗が可能なエレベーターを選ぶようにしましょう。
【2】利用する環境下のチェック
荷物用のエレベーターは、特殊な環境下で利用する場合もあるかもしれません。
例えば、冷凍庫や冷蔵庫などの気温が低い環境が挙げられます。荷物用のエレベーターの中には、特殊な環境下に対応していない場合もあります。冷凍庫や冷蔵庫など、特殊な環境での使用であるかどうかもチェックしておきましょう。
【3】人だけが乗ることも想定される場合
冒頭でも説明した通り、荷物用エレベーターには、荷物を運ぶ人またはエレベーターの運転者以外の人は利用できません。
バックヤードや倉庫の使用状況によっては、人だけが乗ることも想定される場合もあるかもしれません。人だけが乗ることも想定される場合は、荷物用ではなく「人荷共用エレベーター」を選ぶのが適切です。
まとめ
今回は、荷物用エレベーターの安全性と計画時のポイントについてご紹介しました。
定期点検・保守点検を行っていない場合や、荷物用エレベーターの誤った使用方法などは、大きな事故につながる恐れがあります。
バックヤードで荷物用エレベーターを利用する場合、使い方を守っての使用や、不備を感じたらすぐに点検を行うなど、事故予防に努めるようにしましょう。