安全衛生委員会とは?社内に設置する目的について
2018.10.15店舗の安全管理
従業員が安心・安全に働くためには、労働災害を発生させないための、会社の取り組みが大切です。そうした対策を行うために、従業員の人数が一定以上の店舗や営業所では安全衛生委員会の設置が義務付けられています。
安全衛生委員会は事故防止を目的とした組織ですが、どういった基準で設置されるのか、どのような活動をすれば良いのかなど、分からないことも多いもの。そこで今回は、安全衛生委員会の活動や設置条件などについてご紹介します。
安全衛生委員会とは?
安全衛生委員会は、安全委員会と衛生委員会を合わせた総称です。
安全衛生委員会は、どの事業場でも設置が義務付けられているというわけではありません。設置が必須となっているのは、一定数を超える従業員が在籍している事業場です。この人数は労働安全衛生法・政令第8条と9条によって定められており、各委員会や業種によっても異なります。
安全委員会の設置条件
安全委員会の場合、50人以上で設置が義務付けられている業種と、100人以上で設置が義務付けられている業種の2種類があります。50人以上で設置が義務付けられている業種としては、林業、鉱業、建設業、木材・木製品製造業、化学工業、金属製品製造業、道路貨物運送業および港湾運送業などがあります。100人以上で設置が義務付けられている業種としては、一部を除く製造業、電気業、ガス業、水道業、通信業、商品卸売業、小売業などがあります。
衛生委員会の設置条件
衛生委員会の場合は、50人以上の従業員が在籍している店舗や支社、工場などであれば、業種にかかわらず設置が義務付けられています。
なお、安全委員会と衛生委員会は別々のものですが、両方を設置する必要がある店舗などでは、2つの委員会を設置せずとも、安全衛生委員会を設置することで設置義務を果たしているとみなされます。
設置義務がない場合は何もしなくてもいいの?
上記の条件に当てはまらない、在籍従業員数が10数人程度の場合は、安全衛生委員会の設置はしなくても良いということになっています。ただし、その代替として、安全や衛生に関して従業員などから意見を聞く機会を設けるべきだと、労働安全衛生規則で定められています。
小規模の店舗や事業所でも、安全衛生委員会で実施しているような話し合いなどを実施し、安全衛生への意識を高めていくことが求められているといえるでしょう。
安全衛生委員会の構成メンバーは?
安全衛生委員会の委員は、事業者側のメンバーと従業員側のメンバーで構成されますが、安全委員会と衛生委員会とで構成メンバーが異なります。
安全委員会の構成メンバー
総括安全衛生管理者、もしくは事業の実施を統括管理する人間が、委員長や議長を務めます。その他に、安全管理者、安全に関する経験を持つ従業員、それぞれ1名以上のメンバーで構成されます。
委員長・議長以外の構成メンバーについては、事業者から指名を受ける必要があります。また、その半数については、その店舗や営業所などの従業員の過半数の推薦が必要です。
衛生委員会の構成メンバー
委員長・議長は、安全委員会と同じく総括安全衛生管理者、もしくは事業の実施を統括管理する人間が務めます。その他に、衛生管理者、産業医、衛生に関する経験を持つ従業員、それぞれ1名以上のメンバーで構成されます。企業の従業員に対して、健康管理に関する指導や助言を行う産業医がメンバーに含まれている点が、安全委員会との大きな違いです。
さらに、従業員の中に作業環境の測定を行っている作業環境測定士がいる場合は、その従業員についても衛生委員会の構成メンバーとして指名できます。
また、委員長・議長以外の構成メンバーについて、事業者から指名を受ける必要があることや、過半数の推薦が必要なことについては、安全委員会と同様です。
安全衛生委員会の設置目的は?
安全衛生委員会の設置目的は、職場での事故などの、労働災害の防止です。
労働災害と聞くと、転倒ややけどなどの物理的な怪我を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、近年は長時間労働や業務上のストレスから発症する病気による労働災害も多く発生しています。このようなメンタルヘルスに関する労働災害も、安全衛生委員会で取り上げられる議題となります。
労働災害の発生を防ぐため、各委員会では事故や健康障害を防止するための対策など、重要事項についての調査審議が行われます。調査審議は毎月1回以上のペースで開催する必要があり、議事内容を従業員へ向けて周知することや、重要な議事録を3年間保存することなどが義務付けられています。
安全衛生委員会の審議事項は?
では、安全衛生委員会の調査審議で話し合う審議事項とは、どのようなことなのでしょうか。
安全委員会の審議事項
安全委員会での調査審議事項としては、安全に関する規定の作成、危険性や有害性などの調査、安全に関する計画の作成・実施・評価および改善などがあります。主に職場での事故防止など、物理的な安全を確保するための委員会です。
具体的には、労働災害の発生状況を報告・共有したり、労働災害の再発防止策を話し会ったりします。安全に関する活動の年間予定を立てるのも、安全委員会のしごとです。
衛生委員会の審議事項
衛生委員会での調査審議事項としては、衛生に関する規定の作成、衛生に関する計画の作成・実施・評価および改善、健康診断の結果に対する対策、長時間の労働による健康障害の防止、精神的健康の保持増進などがあります。主に身体的・精神的な健康を確保するための委員会です。
具体的には、会社で実施する定期健康診断の結果を受けての対応策や、インフルエンザや花粉症などの季節性疾患に関する対応策を考えるなどします。また、ストレスチェックの実施計画や結果の報告などのメンタルヘルスに関する情報共有や、長時間労働に関する状況報告と対応策考案なども衛生委員会で行います。
ほかに、産業医から衛生に関する話を聞くのも、衛生委員会の重要な内容の1つです。
まとめ
職場での事故や健康障害を防止するために、一定の条件を超えた事業場では安全衛生委員会を設置する義務があります。安全衛生委員会には、事業者側だけでなく従業員も構成メンバーとして参加するため、双方の意見を取り入れながら職場の環境を改善していくことができます。安心して働ける職場を作るためにも、「労働災害を未然に防ぐ」という目的を意識し、月に1度の安全衛生委員会を実りあるものにしてくださいね。