メンタルヘルスケアとは?職場で取り組むべき理由と4つのケア
2020.01.06店舗の安全管理店舗での事故を予防するためには、店舗の安全対策以外にもスタッフのメンタルヘルスケアが大切です。
身体だけでなく心が疲れていると、普段しないようなミスをしてしまうもの。そのミスが、大きな事故につながってしまう場合もあります。そのため、経営トップや現場の責任者はスタッフのメンタルヘルスケアにも力を入れる必要があるのです。
以下では、スタッフのメンタルヘルスケアの重要性と対策についてご紹介します。
メンタルヘルスとは
メンタルヘルスケアについてご説明する前に、まずは「メンタルヘルス」とはどういったこと表す言葉なのかを考えていきましょう。
メンタルヘルス=心の健康
メンタルヘルスを英語で書くと“mental health”です。直訳すると「精神的な 健康」という意味になります。そこから転じて、メンタルヘルスとは「心が健康な状態を保てるように努める・管理する」といった意味合いで用いられます。
メンタルヘルス=心の病気といった認識を持っている方もいますが、それは誤りです。メンタルヘルス不調に陥ると心の病気を発症することがある、という相関関係にあります。
メンタルヘルス不調(精神疾患)とは
メンタルヘルス不調によって発症する病気は、精神疾患や精神障害と呼ばれます。精神疾患には、うつ病や適応障害、睡眠障害、依存症などがあります。
また、メンタルヘルス不調によって、蕁麻疹や円形脱毛症などの皮膚疾患、高血圧症、糖尿病、消化器疾患などの心身症を発症することもあります。
中でも、うつ病はもっとも有名な精神疾患だといえるでしょう。一方で、うつ病に対する理解は十分に広まっているとはいえません。
うつ病にかかると気分の落ち込みなどの情緒面の変化が起きるだけでなく、脳の機能低下によって注意力や集中力の低下が起きることがあります。これらの症状は特に朝の時間帯に強くみられることなどから、遅刻や欠勤が増えるなどの勤怠面での変化が現れることも。意欲低下などが影響し、無断遅刻や欠勤をしてしまう場合もあります。
メンタルヘルスケアとは
メンタルヘルスケアとは、すべての労働者がメンタルヘルスを実現できるように、つまり心が健康な状態でいきいきと仕事に取り組めるように支援していくことです。心が健康な人に対してはその状態を維持できるように、そして心が不健康な状態に陥っている人に対してはメンタルヘルス不調から回復できるように、各労働者の状態に合わせたケアを行っていきます。
メンタルヘルスケアの重要性
「ストレス社会」といわれる昨今、仕事に対して強いストレスを感じている労働者は多くいます。その数は、労働者全体の約6割にも及ぶという調査結果が出ているほど。こうしたストレスが原因でうつ病などの精神障害を引き起こし、退職や自殺にまで追い込まれるケースもめずらしくはありません。
このように、スタッフのメンタルヘルスケアは緊急を要する問題として重要視されているのです。では、スタッフのメンタルヘルス不調が発生すると、仕事面では具体的にどのような影響が出てくるのでしょうか。
事故の発生
メンタルヘルス不調の項目でご紹介した通り、精神疾患を発症すると集中力や判断力が低下することがあります。そういった状態のまま大きな商品や荷物を移動したり、危険物を取り扱う作業をしたりした場合に、ケアレスミスによって本人が怪我をしたり、同僚やお客さまに怪我をさせたりしてしまうことが考えられるわけです。
生産性の低下
本人の動きが悪くなる、コミュニケーション不足で全体が回らなくなるなどの影響で、個人や職場全体の生産性が低下することも考えられます。
休職・退職による人手不足
メンタルヘルス不調が悪化してくると、出勤が難しくなることも。欠勤が続くだけでなく、本人の申し出によって長期休職や退職をすることになると、代わりの人員を確保しなくてはなりません。
このようにスタッフの心が健康でなければ、労働災害などの大きな事故にもつながりかねません。スタッフの心の健康を守り店舗での事故を予防するためにも、経営トップや現場の責任者はスタッフへのメンタルヘルスケアを行うことが大切です。
メンタルヘルスケアの4つのケア
いざメンタルヘルスケアを行おうと思っても、「何をどうすればいいのか分からない」という経営トップも多いはず。スタッフのメンタルヘルスを行うには、4つのケアが重要だとされています。その4つのケアとは、「セルフケア」、「ラインケア」、「事業場内産業保険スタッフによるケア」、そして「事業場外資源によるケア」です。
セルフケア
セルフケアとは、スタッフ自らストレスに気付き、対処するケアのこと。本人が自分自身のストレスに対してケアできるよう、事業者側からも働きかけを行います。
ラインケア
ラインケアとは、管理監督者が職場環境などを把握し、改善に努め、スタッフからの相談にもきちんと対応するケアを指します。
事業場内産業保険スタッフによるケア
事業場内産業保険スタッフによるケアとは、セルフケアやラインケアが効果的に行われるよう産業医などによって支援されるケアを指します。
事業場外資源によるケア
事業場外資源によるケアとは、外部の専門機関によって行われる情報提供や職場復帰などを促すケアを指します。
メンタルヘルスケアにおける4つのケアは、経営トップがスタッフの安全と健康の確保を重要課題として捉え、方針を明確にすることで初めて受けられるケアです。店舗事故を防ぐためにも、スタッフの心のケアはしっかりと行うことが大切です。
職場で行うべきメンタルヘルスケアの取り組み
では、職場のメンタルヘルス対策をするためには、具体的にはどのような取り組みをしていけば良いのでしょうか。
ストレスチェック制度
労働安全衛生法の改正により、2015年12月以降、労働者数が50人以上の事業所では年に1回ストレスチェックを実施することが義務付けられています。
ストレスチェックとは、労働者のストレス状態を調べるための簡単な検査です。検査結果を集計して職場環境の改善に活かすほか、高ストレスと判断された人自身から申し出があった場合に産業医による面接指導を実施するなどして活用します。
回答者が現在どのような状態かが分かるほか、検査を実施し質問に対する回答を考えてもらうことで労働者本人のセルフケアを促す効果もあります。
メンタルヘルスケア教育
メンタルヘルスに関する研修や情報提供などを通じて、従業員自身や管理監督者に対してメンタルヘルスケア教育を行う取り組みも重要です。厚生労働省が配布しているマニュアルなどを利用して社内研修を実施するのも良いですし、社外のセミナーを受講できるよう取り計らっても良いでしょう。
まとめ
今回は、職場の安全に欠かせないメンタルヘルスケアについてご紹介しました。
メンタルヘルスケアとは、すべての従業員が健やかな精神状態でいきいきと働けるように、事業者側が支援していくことです。メンタルヘルスケアを行うことにより、メンタルヘルス不調による事故や労働災害の発生、従業員の休職・退職などを未然に防ぐことができます。
4つのケアを連携して行い、従業員が安心して楽しく働くことができる職場づくりを続けていきましょう。