安全衛生活動とは?計画の立て方や具体的な取り組み例をご紹介
2019.11.18店舗の安全管理店舗にとって、お客様にケガなどがないよう安全管理に努めるのは当然のことではありますが、それと同時に従業員の安全と健康への対策もしっかりと行う必要があります。厚生労働省の発表では労働災害での死傷者は年間10万人を超えるため、各店舗で意識して安全対策することが大切です。
そうした安全対策のため、店舗では安全衛生活動が推奨されています。この安全衛生活動はどういった方針で行い、どういった点に注意すればいいのでしょうか。
以下では、店舗の安全対策のために行う安全衛生活動についてご紹介します。
安全衛生活動とは?
安全衛生活動とは、店舗での労働災害を防止するための取り組みです。
そもそも労働とは何のためにするのかを考えると、労働者側としては生活を送るためや家族を幸せにするため、雇用者側としては会社を繁栄させるためなどの目的が挙げられます。しかし、労働が原因による従業員のケガや病気、死亡などの「労働災害」が起こった場合、会社の損失だけではなく従業員が生活できなくなるなどの人道的な問題にもつながりかねません。
そのため、従業員が安全かつ生産的に働く環境にするためには、安全衛生活動が重要なのです。
安全衛生活動の方針と計画
安全衛生活動を進めるにあたっては、年間の安全衛生推進計画を策定し、基本方針と計画に則って店舗の安全対策を進めていきます。
基本方針と計画は、前年度までの実績を考慮して年度ごとに決定します。多くの店舗を抱えるチェーン店などでは本社の掲げる方針や計画とは別に、各店舗独自の方針や計画を設定するケースもあります。
安全衛生活動の方針としては、労働災害対策の定着や継続、コンプライアンスの徹底、安全に考慮した環境整備など、店舗に不足していると思うものを設定します。
この方針を達成するための取り組みを検討し、1年を通して実施するための計画を立てます。随時行うもの、毎週行うもの、毎月行うものなど取り組みにもさまざまな種類があるため、計画を立てる際には注意が必要です。
また、店舗の規模によっては安全衛生委員会の設置が義務付けられています。
安全衛生委員会とは、職場の安全衛生に関する従業員の意見を事業者側に伝える委員会のことです。雇用者の一方的な管理だけでは安全衛生は十分なレベルに達しにくいため、実際に現場で働く従業員が気づいたことを反映させることは重要といえます。
安全衛生活動の具体的な取り組み事項とは?
上述したように、労働災害対策として行う安全衛生活動ではさまざまな取り組みが行われます。
4S活動やKY活動、危険の見える化などはよく見られる取り組みです。
4S・5S活動
4Sとは整理、整頓、清掃、清潔のことで、さらに躾(しつけ)を加えたものを5Sと呼びます。これらを意識して日常の活動を行うことを4S・5S活動といい、労働災害対策だけでなく、普段の作業の効率化にも役立ちます。
それぞれの言葉の意味は以下の通りです。
整理…不要なものを捨てること
整頓…物を使いやすいように並べること
清掃…掃除しながら物の点検をすること
清潔…清掃した状態を維持すること
躾…きれいに使用するように習慣づけること
まず整理・整頓は安全衛生上の基本の心得です。例えば、どこに何があるのかを全員が把握しておかないと労働生産性が著しく低下する現場もあるでしょう。また、使った物が元の位置に戻されていないと、それらを探している間に他の作業者とぶつかってしまったり、事故につながったりする可能性もあります。特に危険物や重機、精密機械などを取り扱う仕事では、ちょっとしたことが大事故になることもあるのです。
また、清掃や清潔を心がけることで精神衛生的にも働きやすくなることに加えて、物の位置が把握しやすいというメリットもあります。
KY活動
KY活動のKYとは、危険予知のことです。作業を行う際にどういった危険があるのかをあらかじめ確認し、一人ひとりが危険を認識することで事故を抑制します。
普段から何が危険なのか考えながら働くことになるため、作業中の危険性を強く意識することになります。また、危険予知の報告やその危険性を共有することで作業の集中力も高まり、生産性の向上にもつながります。
不注意やボンヤリなどが原因のヒューマンエラーを防ぐためにも、KY活動は重要な対策のひとつです。
危険の見える化
危険の見える化は、店舗内で事故が発生しやすい箇所にステッカーを貼るなどして視覚的に危険が認識できるようにするものです。見える化を行うことで、危険なポイントでの慎重な行動を促すことができます。
単に危険な場所を周知するだけではなく、目に見える形で危険だと知らせることでより強くその危険性を理解することが可能です。
リスクアセスメント
リスクアセスメントとは「危険性又は有害性等の調査」のことで、一般的に職場における労働者に対する危険性や有害性を特定し、対策を考えるまでの流れのことを指します。
リスクアセスメントを行うことで職場におけるリスクが明確になるだけではなく、リスクへの対策を合理的に練るためリスクへの確実なアプローチが可能です。結果的に、安心して働ける職場環境づくりになり、またどのようなリスクがあるのかを従業員全員に周知することもできます。
安全衛生方針の周知
本社の経営トップや店長が定めた方針を掲示したり、冊子にして従業員に配布したりして周知することも重要な取り組みのひとつです。
現場の従業員が安心して働けるかどうかは経営陣の心がけや対策に左右されます。従業員に方針を押し付けるのだけではなく、まずはトップから具体的な行動に移すことが重要です。
安全衛生活動は「振り返り」「見直し」することが大切
安全衛生活動は一度計画を立てて実行したら終わりではなく、計画の進捗状況や変更の必要性、達成状況などを定期的に振り返り、見直すことが重要です。効果が表れている活動とそうではないものがあった場合、何が原因で効果が出ていないのかを考え、変更すべき部分を洗い出すなど検討可能な点が多く見えてきます。
このように、計画(Plan)・実行(Do)したら、内容を確認(Check)し改善(Action)することを忘れないようにしましょう。このPDCAサイクルを意識することで安全衛生活動が次第にブラッシュアップされ、より良い職場環境づくりにつながります。
まとめ
労働災害対策の安全衛生活動は店舗にとってプラスになるのはもちろん、職場環境が向上することから従業員にとっても大きな意味のある活動であるといえます。店舗や従業員のためにも、安全衛生活動はしっかりと行うべきです。
今回ご紹介した内容を元に、職場の安全衛生活動について、ぜひ見直しを行ってみてくださいね。