目の不自由な人が買い物や食事で困ることは?店舗ですべき視覚障害者への配慮
2020.11.26店舗の安全管理もし、目の不自由なお客様が来店されたら、スタッフはどのような対応を心がければ良いのでしょうか。いざという時に慌てて悩まないためにも、視覚障害者への理解を深めることが大切です。
今回は、視覚障害者について知っておくべきことと、買い物や食事をする時に店側が配慮したいことをお伝えします。目の不自由な人が安心して利用できるお店作りに、ぜひお役立てください。
視覚障害者のことをもっと知っておこう
視覚障害とは、視力や視野に障害があり、生活に支障があることです。視覚障害者の「見え方」には個人差があるので、買い物や食事をする時に求められるサポートもそれぞれ違うことを覚えておきましょう。
人によって「見えづらさ」が違うのが視覚障害
視覚障害者は、視覚のない「全盲」の方から、視覚は残っているが見えづらい「弱視(ロービジョン)」の方まで、人によって見え方が違います。どのように見えづらいのか、その一例を挙げてみました。
【さまざまな「見えづらさ」】
・対象がゆがんで見える
・全体的に暗く見える
・視野が欠けて見える
・視野の中心だけが見える
・白くぼやけて見える
視覚障害者は、見え方によって「支援のニーズ」が違ってきます。見えづらさにマッチしたサポートをするには、どうすればいいかを本人に直接聞くことが重要です。
視覚障害者の外出をサポートするもの
目の不自由な人が外出する時、頼りになるものがあります。一般的によく知られている「白杖」「盲導犬」「点字ブロック」をご紹介しますね。
1.白杖(はくじょう)
白杖は、視覚障害者が安全に歩行するために使う白い杖のことで、「盲人安全つえ」とも呼ばれています。目の不自由な人にとって白杖の重要性は高く、特に下記のような大きな役割があります。
・歩く方向に障害物がないか確認する
・自分の周囲をチェックする
・視覚障害者だと他者に伝える
店内や街中で白杖を使っている視覚障害者の方を見かけた際に、「何か困っていませんか」「一緒に歩きましょうか」と声をかけることは決して失礼なことではないのです。
2.盲導犬
盲導犬とは、視覚障害者が安全に歩行できるよう誘導する犬のことで、国が指定する「盲導犬育成施設」で訓練されています。「身体障害者補助犬法」によって、お店などに同伴することが許されています。
盲導犬は、視覚障害者が信頼している大切なパートナーです。飼い主の安全を守るため外出中は集中しているので、身体をなでる、声がけをする、食べ物をあげるなどの行為を控えるのが、周囲の人に求められる必要な配慮です。
3.点字ブロック
前方がよく見えない人にとって、足元に見える黄色い点字ブロック(視覚障害者誘導用ブロック)は、スムーズに進行するためのナビゲーションになります。
ブロックのデコボコを足の裏の触感で判断することで、全盲の方でも「進め」「注意」を判断することができます。点字ブロックの上に物や自転車などが置かれていると、視覚障害者は安全に通行することができなくなってしまい、大変危険です。
視覚障害者が「買い物」で困ること
見えづらいというハンデがあるお客様が来店した時、店のスタッフはどんなことに配慮すれば良いのでしょうか。視覚障害者の「困った」にフォーカスして、サポートの仕方を具体的にお伝えします。
困ること①「誰に質問すればいいのかわからない」
お店の様子がわかりにくいお客様にとっては、「いらっしゃいませ」という複数の声は聞こえても、誰にサポートしてもらえば良いのか困ることがあります。
まず、店側は担当スタッフを決めて自己紹介をしましょう。たとえば、「私は店長の〇〇といいます。何かお手伝いできることはありますか」と、お客様に優しく声をかけます。本人が「今はいらない」と言ったら、「質問などございましたら、近くにおりますのでいつでもお声がけください」と、安心感が持てるように配慮します。
困ること②「商品の種類・品質・価格が見えない」
お客様の中には、商品の値札に顔を近づけて見づらそうにしている人もいます。色や形は少し見えても、小さく書かれた「数字・文字」を読むのが難しい視覚障害者はたくさんいます。
お客様に「見えなくて困っている様子」が見られたら、「何かお手伝いできることはありますか」と、前方から声をかけるようにします。本人の要望に沿ってサポートするのがポイントです。お客様の気持ちが第一だということを忘れないようにしたいですね。
困ること③「どれを選んだらいいのかわからない」
商品がよく見えないお客様は「見比べる」ということが難しいので、判断に迷うことも少なくありません。本人のニーズにできるだけ近いものを購入してもらうためにも、品質・大きさ・重さ・色・食品の新鮮さ・コストパフォーマンス・新製品であること・セール品など、商品の情報をより詳しく伝えることが重要になります。
対応するスタッフには、お客様の質問に答えられる「専門知識」や、見えない人でもイメージできるような「簡潔でわかりやすい説明」ができる能力が求められます。
目の不自由な人が「食事(外食)」で困ること
視覚障害のあるお客様にも、おいしい食事を楽しんでいただきたいと考えるレストランや飲食店が増えていますね。目がよく見えない人が外食をするにあたって、どんなことに困るのか知っておくと、スタッフがするべき配慮がわかってきます。
困ること①「店内をスムーズに移動できない」
視覚障害者は、店の構造やインテリアなどがよく見えず、食事を運ぶスタッフや他のお客様にぶつかる可能性もあるので、店内を移動する時はサポートが必要になります。
スタッフが目の不自由な人を誘導する時は、肘や肩のあたりにつかまってもらいながら、お客様と歩調を合わせて進むようにします。手を引っ張ったり、後から背中を押したりするのは、本人が不安になってしまうのでNGです。イスやテーブルは、お客様自身にも触って確認してもらうようにします。
困ること②「メニューが見えない」
目の不自由な人が一人で外食をする時、メニューの内容を把握できないのは困ったことです。店のスタッフは、カテゴリー別にメニューを読み上げ、季節のメニューやキャンペーン商品なども詳しく伝えるようにしましょう。
視覚障害者にとって理想的なのは、点字のメニューがあることです。大手外食チェーンなどでは点字メニューが設置されている店も少しずつ増えています。
困ること③「食器や調味料の位置がわからない」
テーブルの上に何があるのか説明することは、店のスタッフが必ず心がけておきたい大事なサポートです。
目の不自由なお客様が、テーブルの上にある物の配置を把握するために、わかりやすくて便利な「クロックポジション」を覚えておきましょう。テーブルを時計の文字盤に見立てて食器や調味料を置くと、それ自体は見えなくても位置がわかります。「3時の所にスープがあります」「フォークは8時の位置にあります」など、ひとつずつ説明しましょう。
まとめ
今回は、視覚障害者のお客様に対し、買い物や外食の場面で店舗ができる配慮についてお伝えしました。
視覚障害者にとって、単独で初めてお店を訪れる時は、緊張と不安でいっぱいです。どんなスタッフがいて、どんな対応を受けるのかは、最も気になるところです。温かいサポートが受けられることがわかれば、次回からは安心して利用することができます。
目の不自由なお客様をサポートする時に必要なのは、本人が望むことをよく聞くことです。「目が見えないのだから、こうしてあげよう」とスタッフが一方的に判断するのではなく、お客様が何を望んでいるのかを尊重しましょう。このような姿勢を大切にすることで、お客様にとって居心地のいいお店づくりができるはずです。