アルコール消毒液の設置・保管の注意点。使用期限切れや詰め替えは危険?
2021.08.27店舗の安全管理昨今の社会情勢の変化にともない、感染症対策のため店内入口付近に手指消毒用のアルコール消毒液を設置するのはほぼ当たり前のこととなりました。
また、お客さまが触れる可能性がある設備や物品をアルコール消毒液で都度清拭(拭き取り)している店舗も多いでしょう。
しかし消毒液も、多くの方に安全に利用してもらうには選定や設置に注意すべき点があったり、保管状態にも一定の配慮を行ったりする必要があります。
そこでこの記事では、アルコール消毒液の選び方や適した設置方法、保管する際のポイントについてご紹介します。
お客様用やスタッフ用にアルコール消毒液を使用している店舗の方は、今一度、安全対策が万全かどうかチェックしてみてください。
感染症対策用の消毒液を選ぶ際のポイント
店頭設置用のアルコール消毒液には、手指消毒用のものと物品消毒用の2種類があります。用途に合ったものを選び、適切な店内の衛生状態を保ちましょう。
感染症対策を目的とした手指消毒のためには、濃度60%以上のアルコール消毒液を選定することが適しています。
また、手指消毒用アルコール消毒液を、店内備品や商品の清拭に転用することは避けてください。
手指消毒用アルコール消毒液には、手荒れ予防に配慮するため保湿成分や湿潤成分が添加されている製品もあるためです。
それらの消毒液で備品や商品を拭くと、べたつきや変色・変質の原因となる場合がありますので注意しましょう。
火災につながる恐れも…!アルコール消毒液の引火リスク
アルコール消毒液は、含有成分の半分以上がアルコールです。アルコールには高い引火性があるため、アルコール消毒液にも引火による火災を引き起こすリスクがあることを知っておかなければなりません。
手指消毒用には、アルコール濃度60%以上の消毒液を選定すると良いことを先に記述しましたが、この濃度のアルコール溶液は消防法上の危険物に該当します。
危険物にあたるアルコール消毒液には、ラベルなどに必ず「火気厳禁」の注記がありますので、誤った取り扱いを避け、安全に配慮しながら使用することが求められます。
アルコール消毒液の正しい取り扱い方
【1】火気から遠ざけて使用する
火気の近くで使用することで、引火の危険がともないます。火気のない場所で保管・使用するとともに、誰かが喫煙することが予測される場所にもなるべく置かないようにしましょう。
【2】保管時は直射日光や高温を避ける
屋外や窓際といった直射日光が当たる場所は、一時的に非常に高温になる場合があります。
特に駐停車中の車内などは、直射日光の影響で想像以上に温度が上がる可能性があります。
過熱や他の収容物の発火による万一の引火を防ぐため、直射日光が当たる場所や車内での長時間の放置は避けましょう。
引火性の高いアルコール消毒液は、必ず低温の暗所で保管することを心がけてください。
アルコール消毒液を設置する際の注意点
アルコール消毒液を店内に保管したり店頭に設置したりする際に、火気や直射日光を避けることは先にも述べましたが、アルコールが持つ特性上それ以外にも注意すべき点があります。
子供の目の高さに設置しない
アルコール消毒液は目や口、皮膚の敏感な部分に刺激となるため、子供の目の高さの位置を避けて設置しましょう。
実際にアルコール消毒液の飛沫が子供の目に入る事故が報告されており、設置箇所の高さに配慮しつつ、子供の通行時に備えて注意喚起する文書を貼るなどの工夫が必要です。
屋内設置時には適宜換気を行う
屋内でアルコール消毒液を常時使用する際には、気化したアルコールが室内に充満する危険性があります。
適切に換気を行い、引火火災や吸引による体調不良のリスクを回避しましょう。
感染症予防の観点からも換気の励行が推奨されるため、店内の通気性を保っておくことはさまざまな面で有用性が高いと言えます。
アルコール消毒液を詰め替える際の注意点
アルコール消毒液を複数箇所に設置する店舗や1日あたりの使用量があまり多くない店舗では、使いやすい別の容器に詰め替えたり、小分けにしたりして使用するケースも多いことでしょう。
しかし、容器によってはアルコール消毒液の詰め替えに適さないものもあるため、注意が必要です。
アルコールに溶ける素材の容器に注意
液体用の詰め替え容器は、さまざまな素材のものが市販されています。
しかし、それらのなかにはアルコールに含まれる成分であるエタノールによって溶ける材質のものもあります。
特にプラスチック製品のなかには、アルコールが触れると溶けてしまう詰め替え容器があり、注意が必要です。
たとえば、よく見かけるPET素材の容器にも、溶ける可能性のある製品があります。
アルコール消毒液を他の容器に詰め替えて使用する際には、必ずエタノールの詰め替えに対応した容器を選定しましょう。
またアルコール消毒液を詰め替えた容器には、「アルコール消毒液」「火気厳禁」などの注意書きを必ず行ってください。
気化したアルコールは危険なため、換気を適切に
アルコール類は非常に気化しやすいため、消毒液を詰め替える際にはアルコールを多く含んだ可燃性の混合気が発生します。
この可燃性混合気も非常に引火性が高いため、周辺に充満すると火災を引き起こす危険がともないます。
可燃性混合気は吸引すると人体にも有害で、目の刺激や呼吸器の不調、めまいなどを起こす場合もあります。
アルコールが気化した可燃性混合気は空気よりも重く、屋内の下部に溜まっていく特徴を持っています。
充満による危険を避けるため、アルコール消毒液は必ず換気を行いながら詰め替えをしましょう。
少なくなった消毒液への継ぎ足しは行わない
アルコール消毒液の残量が少なくなると、完全に使い切る前に継ぎ足しをしたくなるものです。
しかし、使用中のアルコール消毒液は濃度が低下している可能性があり、その状況で継ぎ足し時に蓋を開けて雑菌などが混入するとリスクになり得ます。
いったん開封して使用を始めたアルコール消毒液は、可能な限り最後まで使い切ってから新しい製品に替えるようにしましょう。
アルコール消毒液を保管する際の注意点
店舗では必ず複数のストックを準備しているかと思いますが、アルコール消毒液を保管する際にも、いくつかの注意が必要です。
大量に保管する場合には消防への届け出が必要
アルコール消毒液は引火リスクを伴うため、アルコール60%以上の消毒液を80L以上保管する場合には、消防署や消防本部などへの届け出が必要です。
該当する場合は、必ず管轄の消防署へ確認し、届け出をしましょう。
なお、すでに危険物施設として許可を得ている事業所の場合でも、別途届け出が必要です。
保管は低温・暗所で行う
引火リスクの項でもご説明した通り、アルコール消毒液を保管する場所は、室温が高くならず直射日光の入らない屋内とすることが適切です。
また、発火性のあるもの(着火用具や燃料など)と一緒に保管することは絶対に避けてください。
使用期限切れに注意する
アルコール消毒液には使用期限(基本的には3年)があるため、必ず定期的に期限を確認するなどして管理を行いましょう。
期限を経過してしまったものは、手指消毒用としての使用は控えることをおすすめします。
期限切れアルコール消毒液の代用方法
使用期限切れのアルコール消毒液は、捨てずに他の方法で活用できる場合もあります。
アルコールによる変色・変質の心配がない設備(トイレや手洗い場など)の清掃、取れにくい粘着テープやシールを剥がす際に使うなどの代用例があるため、ご参考にしてください。
なお、物品や設備の清掃に使う場合は必ず目立たない部分で少量を試し、変色などがないことを確かめてから使用しましょう。
まとめ
アルコール消毒液には安心して使えるイメージがありますが、手指消毒用に適したアルコール濃度の製品は危険物に該当します。
危険物は大量保管する場合には届け出が必要となりますし、少量を保管・使用する際にも数多くの注意点があります。
引火からの火災発生を防ぐため、アルコール消毒液は必ず冷暗所で保管し、詰め替え時は適した容器を選ぶ、換気の良い場所で行うなどの安全対策を徹底してください。
感染症対策を適切に行うことは店舗にとって必須の取り組みですが、その実施に欠かせないアルコール消毒液もあらゆる危険を避けて取り扱わなければなりません。
多方面からの安全性確保を継続的に行い、お客さまに安心感を持って訪問していただける店舗づくりに努めましょう。
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