子供の誤飲事故。予防と応急処置について学ぼう
2019.03.11子どもを事故から守るために幼い子供は好奇心旺盛であり、また判断能力に乏しいことからさまざまなものを口に入れます。そんな子供だからこそ気をつけなければいけないのが、誤飲の事故です。誤飲は子供の事故の中でも発生件数が多いものであり、命を落とす危険性もあります。
そんな子供の誤飲による事故が発生した場合、どういった処置をすればいいのでしょうか。また、そうした事故を発生させないためにはどういった対策が必要でしょうか。以下では、子供の誤飲事故の予防や発生した際の対処についてご紹介します。
子供の誤飲事故はなぜ起こる?
子供の誤飲事故について、まずはなぜ誤飲事故が起きやすいのかを考えていきましょう。
冒頭でもお話しした通り、子供は好奇心が旺盛です。0歳~1歳の乳幼児は、身体の発達により自分の意志で動くことができるようになると、さらにその世界を広げたいと思うもの。ハイハイやあんよなどで動き回り、いろいろなものを見たりさわったりしようとします。そして、持ったものを手の感触で認識するだけではなく、口の中に入れて確かめることもしばしば。これは成長するために必要な行動なのですが、それを子供が誤って飲み込んでしまったときに誤飲事故となってしまいます。
さらに、乳幼児の誤飲事故が起こる原因として、身体的な要因もあります。
乳幼児は気管の機能が未発達なため、食べ物などが食道に入ったときでも気管のふたが完全に閉じないことがあります。そのため、異物が誤って気管に入ってしまうことがあるのです。
もちろん、2歳以上になり「これは食べ物」「これはおもちゃ」といった判断がある程度つくようになっても、油断は禁物です。いたずら心でそれが食べ物ではないと分かっていても口に入れたり、錠剤の薬を見て「お菓子かもしれない」と思い口に入れたりすることは十分にありえます。
また、2~3歳頃はママやパパなど大人の真似をしたがるもの。薬を飲む姿を真似て同じ薬を飲んでしまうこともあります。
子供の誤飲事故を防ぐにはどうすればいい?
子供の様子を確認し、飲み込まないように注意しておくことは大切ですが、ずっと子供を見ているわけにもいきません。子供が異物を口に入れる行為自体を防ぐことは難しいといえます。
誤飲事故を防ぐためには、子供が口に入れそうなものを手が届くところに置いておかないことが大切です。
子供の誤飲事故の原因で特に多く危険なのが、タバコです。未使用のタバコや吸い殻を子供が口にしてしまう事故が多発しています。近年は電子タバコの葉を誤飲する事故も発生しています。
タバコはそれそのもの以外にも、灰皿の中にある灰を口にする危険性があります。また、灰皿に水を入れていたり、灰皿代わりにジュースの缶などを使っていたりといった場合、ニコチンが溶け出した液体にも注意が必要です。水に溶けたニコチンは体内に吸収されやすいため、タバコそのものよりも大変危険です。
幼い子供がいる家庭では禁煙するのが最もいい方法ですが、最低限タバコや灰皿を子供の手が届かない場所に置いておくことが必要です。
タバコ以外には、薬や化粧品、洗剤なども危険なものです。薬については特に発生件数が多いため注意が必要です。こうしたものも、手が届かない場所に置く、きちんとしまうなど子供が触れないように管理しなくてはなりません。
また、ボタンや電池など、小物を誤飲して喉に詰まらせるといったケースも考えられます。一般的には直径3.9cm以下であれば3歳児の口に入ると言われているため、これよりも小さいものは事故が起こらないようしっかりと管理しておくべきです。
子供が遊ぶおもちゃの部品を誤飲する事故も起きています。おもちゃの誤飲を防ぐためには、STマークのついたおもちゃを選ぶことをおすすめします。STマークとは、日本玩具協会が定めた安全基準をクリアしたおもちゃである証です。誤飲につながる小さな部品がないかどうかもチェックされています。
子供の誤飲事故事例紹介
【事故事例1】タバコ1本を誤飲した事故事例
1歳の男児が、自宅内で目を離していたすきにタバコ1本を誤飲した事故の事例です。目立った症状が見られなかったため自宅で様子を見ていましたが、1時間30分後に嘔吐し病院を受診し、胃洗浄の処置を受けました。
※この事例では受診まで1時間30分を要していますが、子供がタバコを2cm以上誤飲した場合は30分以内に受診することが望ましいとされています。
【事故事例2】タバコの吸い殻液を誤飲した事故事例
自宅のリビングにあったタバコの吸い殻を入れていた入れ物から、1歳の女児が液体を飲んでしまった事故です。嘔吐や吐き気、チアノーゼなどの症状が発生。すぐに病院を受診し、胃洗浄や点滴などの処置を受けました。
【事故事例3】睡眠導入剤を誤飲した事故事例
1歳の女児から目を離していたところ、周囲に睡眠導入剤が散らばっており、フラフラしている様子が見られたためすぐに受診。胃洗浄と点滴を受けた後、入院することになりました。
【事故事例4】ボタン電池を誤飲した事故事例
6歳の男児が1人で遊んでいた際に、ボタン電池を誤飲。症状は見られませんでしたがボタン電池の誤飲は危険なため、速やかに受診。X線検査で確認したところ胃の中にあったため、摘出手術を受けました。
誤飲した場合の応急処置は?
子供の誤飲事故は発生することのないように事前に防ぐことが大切ですが、万が一発生した場合に備えて応急処置の方法を知っておくことも必要です。ここでは、子供が誤飲した場合の応急処置についてご紹介します。
誤飲したものを吐き出させる方法
誤飲した異物を吐かせるときは、まず子供の頭を低くします。そして大人の指を子供の喉の奥に入れて、舌を押し下げ吐かせます。
吐かせた後に水や牛乳などを飲ませるべきかどうかは、誤飲したものによって異なります。
気道に詰まったものを吐き出させる方法
気道に詰まった異物を吐き出させる場合には、赤ちゃんであれば腕の上でうつ伏せにさせて頭を下に向け、背中を5回ほど強く叩きます。
1歳以上の子供の場合、両腕を後ろから子供のお腹に回し、おへその上あたりに手を当てて上のほうに素早く押し付ける方法を行っても大丈夫です。しかしこちらの方法は難しいので、講習会などでやり方を教わっていない場合は、1歳以上の子供でも赤ちゃんと同じ方法で吐き出させたほうが良いでしょう。
吐き出させてはいけないものもある
万が一子供が誤飲した場合、一般的には吐き出させることが大切だとされています。しかし、飲み込んだものによっては吐き出させることが逆効果になることもあるのです。
絶対に吐き出させてはいけないものとしては、灯油やマニキュアといった石油商品、漂白剤などの化学薬品、樟脳などが含まれている防虫剤、画鋲などの食道を傷つける恐れがあるものなどがあります。これらを誤飲した場合、吐き出す過程でさらなる被害を引き起こす可能性があることから、吐き出させずにすぐに病院を受診します。
タバコを誤飲した場合の応急処置
子供がタバコを誤飲した場合は、速やかに口の中に残っているタバコの葉を取り除いて、飲み込んだ葉などを吐かせるのが基本です。
吐かせた後は、水や牛乳などは飲ませてはいけません。これは、消化管の中でニコチンが吸収されるのを防ぐためです。
ただし、タバコや灰が浸かっていた液体や水に濡れたタバコを子供が誤飲してしまった場合は、ニコチンが直接体内に入ってしまうため一刻も早く適切な処置を受けることが必要です。自宅での応急処置はせずに、至急病院を受診してください。
応急処置後の受診時に伝えること
病院に行く際には、何を、いつ、どれだけ飲んだのかなど、できるだけ詳しく説明できるようにします。薬や電池を誤飲した場合は、同じものを持参すると良いでしょう。
嘔吐はいつ何回したのか、いつもと様子が違うことはないか、意識ははっきりしているかなど、誤飲後の子供の様子も重要なポイントです。
まとめ
子供の誤飲事故は非常に多く、死亡事故にまで発展することもあります。幼い子供は自分では判断ができないため、保護者が、誤飲事故が起こらないよう十分に注意しなければいけません。
また、万が一の場合に備えて応急処置の基本は覚えておきましょう。ただし、吐かせて良いものといけないものがあったり、吐かせた後に水などを飲ませて良いかどうかが誤飲したものによって異なったりしますので、誤飲事故が起きた場合はその都度、正しい処置を確認してください。