避難訓練は義務?避難訓練を行う目的と事前準備について
2019.06.03緊急事態への対策スーパーやホテル、病院など、不特定多数の人々が出入りする施設は特定防火対象物に指定されており、年に2回以上の消火・避難訓練の実施が義務付けられています。
人の出入りが多い商業店舗などでも、地震や火事など万が一の災害からスタッフやお客様の安全を守るために日頃から備えておく必要があります。こうした理由から、いざというときも慌てずに対応できるよう非常時を想定した避難訓練を行うことが大切です。
そこで今回は店舗管理者などの事業者向けに、避難訓練の実施概要や事前準備などをご紹介します。
避難訓練の主目的を明確に
避難訓練とは消防訓練のひとつで、災害などが発生した状況を想定して、安全な場所へと避難する訓練のことです。起こりうる災害の種類は多岐にわたるため、避難訓練では火災や地震、津波などそれぞれの災害に対し、さまざまな想定で訓練を行うことが求められます。
定期的に避難訓練を行うことにより、どのような手順でほかのスタッフやお客様にそれを知らせるのか、通報や消火対応はどのように行うのか、避難経路や誘導はどのようになっているかなど、訓練の回数を重ねることで、いざというときもパニックにならずに対応することができるのです。
避難訓練を行うときは、それが火災を想定したものなのか、地震を想定したものなのかで対応が異なります。火災を想定した避難訓練の場合は、同時に消化器や消火栓を使用した消火訓練も行うと効率的です。
また、その日の訓練の目的を明確にしておくことも大切です。すべてをしっかり行うことが理想ですが、訓練のための時間をあまり長時間取れない場合などは、「避難の手順を確認する」、「避難器具の取り扱いを確認する」、「避難経路の点検をする」など、主目的を定めておくことで、より効果的な訓練を行うことができます。
店舗での避難訓練は義務?
店舗管理者の方の中には、「避難訓練は必ずやらなくてはならないものなの?」と思っている方もいるかもしれません。しかし、百貨店や飲食店などの不特定多数の人が出入りする建物については、消防法第8条で「防火管理者を定め、消防計画を作成し、訓練を実施しなくてはならない」と定められています。つまり、避難訓練の実施は消防法という法律で義務づけられているのです。
避難訓練の実施を怠った場合、消防法違反として消防署から告発を受けたり、場合によっては社長や店長が逮捕されたりといった事態に発展することもあります。このような事態になれば社会的な影響は甚大なものとなります。必ず避難訓練は規定以上の回数、実施するようにしましょう。
また、実施が義務づけられていない規模の事業所の場合も、非常事態に備えるため、避難訓練は実施することが望ましいといえます。万が一災害が発生し、事業所内で被害が発生した際に、日頃の防災訓練への取り組みが問題視されることもあります。ガバナンスを強化するためにも、どんな規模の事業所でも避難訓練は定期的に実施することをおすすめします。
避難訓練の実施頻度は?
避難訓練の実施回数についても、前述の消防法で定められています。
百貨店などの防火管理義務の発生する建物の場合は1年に2回以上行うよう明記されています。その他の建物の場合は消防計画で定めた回数、つまり回数は管理者が自由に定められるとされています。
消防訓練は避難訓練のほかに、消火訓練と通報訓練とで構成されています。消防法では、避難訓練のほか消火訓練も年2回以上実施することが義務づけられています。通報訓練については回数の指定はないため、消防計画で定めた回数実施すれば大丈夫です。消火訓練や通報訓練は避難訓練と同時に行っても、別日程で行っても問題ありません。
避難訓練と消火訓練、通報訓練をすべて行う訓練は、総合訓練と呼ばれます。災害発生から消火対応、通報、避難までを一続きで訓練できるため効果は高いですが、所要時間がかかるため毎回総合訓練として実施するのは難しい場合もあるかもしれません。年間の営業予定などとの兼ね合いを見て、消防計画を立てると良いでしょう。
避難訓練の実施には消防署への報告や立ち会いが必要?
店舗などの事業所で避難訓練を実施する際には、各自治体の消防署へ届け出を行う必要があります。必ず事前に、申請書を提出しましょう。
避難訓練時には消防署の立ち会いを依頼することもできますが、立ち会いなしでも避難訓練の実施は可能です。消火器なども、消防署への申請時に借りることができます。
「立ち会いの都合をつけるのが大変そうだから……」と訓練の回数を少なめに設定しているのであれば、立ち会いをなしにして定期的に実施したほうが良いといえます。
立ち会いなしで避難訓練を行う場合は、各自治体の消防署や消防庁などのホームページなどで見ることができるマニュアルなどを参考にすることをおすすめします。
事前準備はしっかりと!
避難訓練を行う際には、あらかじめしっかりとした事前準備をしておくことが大切です。
計画を立てる
店舗責任者が指名した防火管理者を中心として、スタッフを交えながら、訓練の内容や目的、役割分担などを決めていきます。
あらゆる想定を行い、どのような事態になっても対応できるように、スタッフ全員が非常時の対応や役割について知っておくことが大切です。
訓練日の告知
避難訓練の日時をあらかじめすべてのスタッフに告知しておきます。回数を重ね、スタッフが対応に慣れてきたら、訓練日を告知せずに抜き打ちで実施するのも効果的な訓練となります。
非常ベルを鳴らす場合などは、近隣のビルや住人などに周知しておき、本当の火災などと誤解されない配慮をしておきましょう。
消防機関への事前通知
前述の通り、スーパーなどが避難訓練を行う場合は、消防機関へ通知を行っていなければなりません。
店舗のみで行う小規模な避難訓練だけでなく、ときには消防機関に協力を要請し、消火訓練や避難器具を使用した訓練などを行いましょう。
避難訓練は、安全対策の課題を見つけるためのものでもあります。「訓練して終わり」ではなく、訓練後に内容を検証することが大切です。
スタッフは適切に対応できたか、避難経路に荷物が放置されていないか、警報機や消火装置に異常はないか、非常時の物資は分かりやすく安全な場所に保管してあるかなど、課題がなかったどうかを振り返り、安全対策や次回の避難訓練に活かしましょう。
まとめ
今回は、店舗などの事業者向けに避難訓練の実施についてご紹介しました。
不特定多数の人が出入りする施設については消防法で実施が義務づけられているため、必ず年に2回以上は避難訓練を実施しなくてはなりません。万が一の事態に落ち着いて対応するためにも、避難訓練の実施は非常に大切なことです。
目的を明確にした上で事前準備を行い、実りある避難訓練を行ってくださいね。