仕事中、目の前で人が倒れたら…倒れたお客様への応急手当などの対処法
2020.03.23緊急事態への対策店舗で起こりうるトラブルのひとつが、「お客様が病気や怪我で倒れる」というもの。もしもお客様が倒れてしまった場合、店舗側は、お客様に対する適切な対処と、その場に居合わせたほかのお客様への配慮や対処が求められます。
もしも、店舗スタッフが何もできずに立ち尽くしているような状態では、お客様の身の安全が脅かされるばかりか、店舗の信用が落ちてしまうことにも繋がりかねません。
そこで今回は、お客様が倒れてしまったときの適切な対処方法や、万一に備えて知っておきたい、店舗の安全対策についてご紹介します。
人が突然倒れる原因とは
人が突然倒れた場合、主に以下のような原因が考えられます。
失神
医学的な定義の中で失神とは、「一定的に意識を消失し、姿勢の維持が出来なくなること」とされています。失神は主に次の4つの原因に分けられます。
・起立性低血圧
・神経調節性失神
・心原性
・脳血管
中でも最も多いのが神経調節性失神で、長時間立ち続けた場合や食後などに起こりやすく、若く健康な人でも起こしやすいのが特徴です。また、起立性低血圧は立ち上がったときに血圧調整がうまくできず失神を起こしてしまう症状です。
食事中や買い物中のお客様が急に倒れた場合は、起立性低血圧や神経調整性失神の可能性が高いと思われます。
てんかん病
大脳の神経細胞が異常に活発になることで意識を失ったり、けいれんを起こしたりする病気です。「脳の地震」とも例えられ、何の前触れもなく突然倒れ、短時間で回復することが特徴です。
国内におよそ100万人の患者がいるといわれています。
その他の原因
その他にも熱中症や脱水症状、脳卒中などが急に倒れる原因として考えられます。持病がある場合は特に可能性が高いですが、特に持病などがない健康な人でも、その時の状況によって突然倒れることはありえます。
倒れたお客様への対処方法
倒れてしまったお客様への対処の流れは、以下になります。
・応急手当を、従業員が率先して行う
・病院に行く場合は、できるだけ従業員が同行する
・連絡先を確認し、当日または翌日に電話や訪問をして容態を伺う
お客様が倒れた原因が店舗とは関係がない場合でも、病院へ従業員が同行しなかったり事後のお伺いをしなかったりすると、倒れたお客様やご家族が店舗に対して不信感を持つことがあります。逆に、「お店の中で倒れて迷惑を掛けてしまったから行きづらい」と感じて来店を控えてしまうお客様もいらっしゃいますので、容態の確認などはていねいに行うことをおすすめします。
店舗側に落ち度があった場合には、さらに慎重な対応が必要です。病院や自宅まで付き添い、当日、または翌日にお見舞いに伺いましょう。そして、容態の経過を見守るとともに、お客様本人やご家族へ、お詫びや補償の手続きをします。
この際には、現場スタッフだけでなく、店長や経営陣などの責任者が対処をして、お客様に誠意を見せましょう。
応急手当の基本的な手順
応急手当の細かい流れについて、以下でご説明します。
救護を手伝ってくれる人を呼ぶ
まずは、一緒に救護活動をしてくれるように周囲の人に大声で呼びかけましょう。従業員同士の連絡用としてPHSなどを持ち歩いている場合は、場所を伝えて応援を要請します。
命を助けるためにはできるだけ早い段階で適切な処置ができるよう、1人で対処しようとせずに複数人で救護活動を行うことが大事です。
役割分担をする
救護を手伝ってくれる人が複数人集まったら、速やかに役割分担をします。倒れた人に対して実際に胸骨圧迫や人工呼吸などを行う人、通報する人、またAEDが必要だと思われる場合は機器を取りに行く人などを決めてください。その際に「誰か通報してください!」と呼びかけても周囲の人が戸惑って手を挙げず時間がかかってしまうことがあるため、「あなたは119番をしてください」などのように指名すると良いでしょう。
119番通報して救急車を呼ぶ
呼びかけても意識がない、不自然な呼吸をしている、明らかに具合が悪そうなど自分たちではどうしようもなく専門的な治療が必要だと判断した場合は、すぐに救急車を呼んでください。
救急車が本当に必要か迷ったとしても、緊急性を感じ、他に搬送する手段がない場合は遠慮せずに通報しましょう。
意識があるかどうか確認する
大きな声で呼びかける、手足を叩く、手足をつねる、などをして意識の有無を確認します。呼びかけるときには、肩を叩きながら行うと意識が戻りやすくなります。このとき、脳梗塞の場合は体の片側が麻痺している可能性もあるため、必ず両肩を叩いてください。
ただし、脳卒中の恐れもあるため、体を揺さぶることは絶対に避けましょう。
意識がない場合には、呼吸の有無の確認をします。呼吸があれば横向けに寝かせ、呼吸がなければ気道の確保をしてください。それでも呼吸が回復しない場合には、直ちに人工呼吸を施します。
また、脈がない場合には胸骨圧迫(心臓マッサージ)も行います。
意識があっても、怪我で血が出ているような場合には、速やかに止血をしてください。手足からの出血であれば、その部分を心臓より高く上げ、出血を抑えます。
そして、傷口にガーゼやハンカチを押し当てるか、包帯を強めに巻いて圧迫します。それでも出血が止まらないときは、出血部位よりも心臓に近い部分の動脈を、骨に向かって押さえましょう。
心肺蘇生
通報して救急車を呼んだとしても、到着するまでは平均7~9分かかるといわれています。しかし、心肺が停止した場合、4分以内に胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行えば50%の確率で助かりますが、そのまま放置しておくと生存確率は20%になります。そのため、心肺が停止している場合は、ただちに適切な心肺蘇生を行いましょう。
しかし、胸骨圧迫は慣れていないとすぐに疲れて正確にできなくなるため、何人かで交代して行うのがベターです。
声掛けをする(励ます)
意識がもうろうとしている場合、倒れた方は精神的にも不安になっています。心肺蘇生などの処置を行いながら、「大丈夫ですよ」「すぐに救急車が来ますからね」などのように安心させる言葉をかけましょう。
応急手当を身に着けるには
応急手当の方法を正しく身につけたい場合は、救命講習を受けることがベストです。
救命講習は各消防署に連絡すれば、実際に教えてもらいながら心肺蘇生などの適切な方法を学べます。受講する時間を取れない場合は、消防庁が運営するサイトで一般市民向けWEB講習を受けることも可能です。
また、店舗で独自のカリキュラムを組んで、緊急時の店舗内での動き方などを身につけさせることも1つの方法です。
その場に居合わせたお客様への対処方法
「お客様が倒れる」というトラブルが起きると、その場に居合わせたお客様は、落ち着いて買物や食事を楽しめなくなってしまうこともあります。ですから、その場に居合わせたお客様への配慮や気遣いも重要です。
まずは、お客様が不安にならないよう、状況説明を行いましょう。併せて、理由はどうであれ、迷惑をおかけしてしまったことに対して謝罪をします。そのうえで、他のお客様に被害が及んでいないかを確認します。
そして、お客様の安全確保のために、すばやく清掃や片付けを行いましょう。飲食店の場合には、席を移動していただく必要があることもあります。新たな席を準備し、誘導をしてください。
また、トラブルが理由で「退店したい」というお客様がいらっしゃれば、快く応じ、重ねて謝罪をしましょう。
なお、他のお客様がトラブルに気づいていないと思われる場合には、通常通りの営業対応をするのが良いでしょう。
まとめ
店舗内で病人や怪我人が出た際に適切な対処をするためには、スタッフに対して安全対策に関する教育を行う必要があります。対策マニュアルや基本の対処方法を教えるのはもちろん、実際にトラブルが生じたときに迅速に動けるよう、救急講習や安全対策講習を行って実践的な訓練を実施してください。
店舗の安全を守り、お客様に安心してご利用いただけるよう、日頃からしっかりと対策を行いましょう。