BCP(事業継続計画)とは?BCP策定が必要な理由
2020.02.03緊急事態への対策2011年に発生した東日本大震災を始め、近年は比較的規模の大きい自然災害が度々発生しています。
地域のインフラなどもそうですが、店舗や事業者にとっては事業の復旧も急がなければいけません。こうした自然災害や何らかの脅威にさらされたとき、被害をできる限り抑えるための対策は日頃から考えておく必要があります。そうした対策のひとつとして、BCP(事業継続計画)の策定があげられます。
以下では、BCP(事業継続計画)がどういったものであるか、通常の防災対策とはどう違うのかについてご紹介します。
BCP(事業継続計画)とは?
BCPとは「Business continuity plan」の略で、一般的には事業継続計画と訳されますが、行政機関の場合は業務継続計画と呼ばれます。事業継続計画は非常事態が発生した際に被害を最小限に抑えつつ、扱う事業のなかで最も重要性が高いものを最速で再開させるための計画です。これにより、事業全体の損害を最小限にとどめることができます。
また、そうした非常事態に際しての行動をまとめた対応マニュアルや、そのマニュアルの保守・運営業務のことも事業継続計画と呼ばれます。このように、事業継続計画という言葉は複数の意味を持っています。
事業継続計画の策定は国や各団体によって推奨されているものの、現状では策定を義務付ける法律や条例はありません。しかし、近年の自然災害の頻発やそれによる従業員の死傷、事業再開の遅れなどから、対策の重要性は高まっています。
BCP(事業継続計画)の策定は義務?
上述の通り、現在のところ(2020年1月現在)はBCPの策定は義務付けられているわけではなく、策定していないからといって罰則があるなど法による拘束力はありません。国や各団体がBCP策定のためのガイドラインを作成したり、サポート体制を整えたりなどBCP普及のために動いてはいますが、最終的には企業努力に任せられているのが現状です。
しかし、実際に災害など非常事態が発生した際、災害対策や避難計画に十分取り組んでいなかったために従業員の中に死傷者を出してしまったり、事業を再開できなかったために経済的な損失を取引先などに与えたりする可能性もあります。このような場合に、BCPを策定していなかったということで安全配慮義務違反や債務不履行などの理由で遺族や取引先に訴えられることも考えられるのです。
以上のように、BCP策定は義務ではありませんが、策定していないことで後々大きな損失や不利益を被ることになるかもしれません。不測の事態を想定するとBCPは策定しておくべきだといえるでしょう。
BCP(事業継続計画)が必要な理由
国や各業界がBCP策定に力を入れているのには理由があります。BCPがどうしてここまで必要だと考えられているのかその理由を見ていきましょう。
災害時の判断を正常化・迅速化させるため
日本は災害の多い国です。地震や台風などにより大災害に見舞われる可能性は常にあります。いつ何が起こるか分からない状況の中、BCPを策定していない企業では非常時にどのように動けば良いか分からずパニック状態になってしまうことでしょう。冷静さに欠けた判断をする危険性もありますし、重要な決断を客観的な目線で下すことができないかもしれません。
もちろん、BCPがあれば何が起こっても大丈夫というわけではありませんが、少なくとも何を優先的に行うべきか、何を重視した判断をすべきかなどの指針にはなるはずです。
事業構造の強化を図るため
現代ではアウトソーシングやクラウドソーシングの導入、またサプライチェーンマネジメントの最適化などを活用して事業を運営している企業も多くあります。これらの手法は平常時には非常に有効かつ効率的ですが、非常時にはどこか1カ所に問題が起こるだけで事業全体が回らなくなるリスクがあります。
これらのような事業構造の欠点を強化するためにも、BCPによって非常時でも最低限の運営はできるようにしておくことが必要なのです。
取引先、投資家へのアピール
BCPを策定していると、この会社は何かトラブルがあっても最低限の取引には問題ない、という安心感を与えることができます。非常時でも適切な対応ができるという点は、社会的な評価を高めることにもつながるため投資家にとっても魅力的です。
BCP(事業継続計画)と防災対策の違いとは?
自然災害への対策としては、防災対策があります。この防災対策と事業継続計画(BCP)には、どのような違いがあるのでしょうか。
事業継続計画と防災対策の大きな違いは、適用される範囲です。防災対策は事業継続計画に内包される要素のひとつといえ、適用される範囲は自然災害や伝染病などといった災害に限定されます。
これに対して事業継続計画は、事業に悪影響を及ぼすあらゆる事柄への対策として策定されます。そのため、自社だけでなく取引先やライフラインなど、自社の事業を素早く再開させるために必要なものすべてが守る対象となっています。
また、事業継続計画と防災対策は、その方向性も大きく異なります。防災対策の場合、台風や地震、津波といったきっかけとなる原因事象をベースにして考えられています。
これに対して事業継続計画は、そうした原因事象を内包しつつも、それによって発生するシステムの停止や生産ラインの停止といった結果事象をベースに考えます。設備などを災害から守るために策定するのが防災対策で、そうした設備が被害を受けた場合に備えた再調達に重きをおいた計画が事業継続計画なのです。
こうしたことから、防災対策が事業継続計画と同じ効果を持つことはありませんが、事業継続計画には防災対策が含まれているといえます。
BCP(事業継続計画)とBCMの違いとは?
BCMとはBusiness Continuity Managementの略で、事業継続マネジメントと訳されます。BCMはマネジメント全体のことを指すのに対し、BCPはあくまでもPDCAサイクルの中のいわゆるPlan(計画)の部分です。
BCPとは非常時に最低限の事業を継続し、また再開するためにどのようなことをすれば良いのか、何に優先的に取り組むべきなのかを定めた計画のことを指します。一方で計画を練ること自体も含めて、計画をどのように運用し社内に浸透させるのか、いかに戦略的に活用するのかなどを管理するのがBCMなのです。
BCPだけがあっても実際にその存在や内容を知るものが少なかったり、どのような流れで実行に移すのかが社内に周知されていなかったりすれば結局事業継続が難しい場合もあります。BCPを滞りなく実行するためにはBCMが不可欠だといえます。
まとめ
現在BCP(事業継続計画)を策定している企業の多くが、自社独自のものを作成しています。書籍やガイドライン、テンプレートなどを参考にすることで、BCP(事業継続計画)を策定することは可能です。まだBCP(事業継続計画)を策定していないという場合には、一度検討してみてはいかがでしょうか。