専門家に聞く! ガラスの安全性①【業界の取り組み】
2016.09.30専門家に聞く大きな地震や、災害後、建物の安全性について問われることが増えてきました。
そのなかでも売場のガラスは店内を明るく綺麗で開放的な空間にしてくれる一方で、災害が起こった場合のリスクが大きいことは確かです。
ガラスが割れるということに対しては、合わせガラスや強化ガラスを使用する、または飛散防止フィルムを貼ることで被害を最小限に留めることができます。しかし他の素材に比べてガラスの比重は重く、落下や思わぬ破損を防ぐために注意する点は何でしょうか。
今回、ガラスの専門家として、ガラス加工と店舗のガラス製品取り扱いの実績豊富な足立硝子株式会社様、そして窓ガラス用フィルムを販売する三晶株式会社様に、ガラスの安全性への取り組みについて、お伺いしました。
足立硝子様は、建築用板ガラスの加工・販売を行う、ガラスの専門家です。
お客様の注文に合わせてガラスを切断し、小口を磨くなどの加工を施して、主に建築中の現場に届けています。
ガラスの安全性については、震災後、特に新しい防煙垂壁を提案することで対策を進めてきました。
防煙垂壁とは、スーパーマーケットやデパートなどに設置されている、天井から50cmほどのガラスの壁で、火災による煙が一気に広がることを防ぐものです。
この壁が、強い揺れによって脱落・破損が起こったと報告されました。
そこで足立硝子様は、ガラス取り扱いの知見を活かし、シート式防煙垂れ壁「フェンスクリアー」を開発し、従来のものより軽く安全な製品として販売を開始しています。
三晶様は、各種機能資材を取り扱う専門商社です。
ガラス用フィルムについては、長年の経験とノウハウ、また独自のフィルム性能試験施設を持つなど、専門性の高いサービスを提供しています。
ガラスの飛散防止性能を高めるために、ガラス用フィルムを貼ることは従来から行われてきましたが、三晶様は「震災後は、扉や窓のガラスだけではなく、棚板などにも飛散防止フィルムを貼ることが重要視されています」と指摘します。
最初のコストを安価に抑えるよりも、割れた時のコストを意識する店舗が増えているようです。
足立硝子様と三晶様は、協働してガラスの安全性向上に努めています。
通常はフィルムをガラス加工の現場に納入し、機械で貼り付けるだけですが、三晶様ではフィルム強度やガラス飛散防止効果など、詳細な実験を行うことも可能で、実験結果などの技術資料を元に、足立硝子様はお客様に対して、より安全なガラスの設置方法を提案しています。
しかしガラス自体の安全性が高まっても、店舗へのガラス設置について足立硝子様は、「デザイン性を優先した不安定なガラスの設置は事故につながるため、避けて欲しい」と指摘します。
ガラスの安全性については、ガラスの販売元だけではなく、設置して利用する側の意識を高める必要があるのです。