エレベーターの仕組みは?事故事例と安全対策をご紹介
2019.02.25買い物中の事故・災害エレベーターにおける事故は、たびたびニュースなどのメディアでも取り上げられています。なかには被害者が死亡するような重大な事故も起きているため、エレベーターを設置・利用する際には注意が必要です。
とはいえ、普段エレベーターを利用するときに事故の危険性を意識している方は少なく、注意すべきポイントについてもわからないことが多いものです。そこで今回は、知っておくべきエレベーターの仕組みや注意すべきポイントについてご紹介します。
エレベーターの仕組み
ここではエレベーターの仕組みについて簡単にご説明します。
ロープ式
ロープ式は、トラクション式(つるべ式)と巻胴式(ドラム式)とに分類されます。どちらも、利用者が乗り込む「かご」をワイヤーロープで釣り上げる仕組みです。
トラクション式は、今では多くのエレベーターに採用されている駆動方式です。かごと釣り合いおもりとがワイヤーロープでつるべ井戸のようにつながっていて、ロープ折り返し部分の巻上機で駆動します。
おもりの働きが駆動を補助するためモーターが小さくて済み、構造もシンプルなため、低層ビルでも超高層ビルでも用いられる方式です。
巻胴式は、上部に設置されているドラムにロープを巻き取ることにより、かごを上昇させます。ワイヤーロープを一直線に巻き上げるより単純な仕組みで、低層ビルで用いられることが多い方式です。
油圧式
油圧式エレベーターは、上から釣り上げるロープ式とは逆に、下から押し上げるような仕組みになっています。
かごを下から油圧ジャッキで支える方式のほか、油圧ジャッキとつながった滑車のロープを通じてかごへと動力が伝わる方式があります。どちらも、作動油の圧力によってエレベーターを昇降させる仕組みです。
ロープ式の場合、巻上機や安全装置などを設置する機械室は建物の最上階などに設置されますが、油圧式は建物上部に機械室を設置する必要がないことがメリットです。そのため、低層階への荷物運搬用エレベーター によく用いられます。
その他
ロープ式、油圧式の他にも、リニアモーター式や水圧式などの環境に優しい仕組みのエレベーターの開発・設置が進められています。将来的にはこのような方式のエレベーターが、主流となるかもしれません。
エレベーターの事故事例
さまざまな仕組みで動いているエレベーター。私たちの生活を便利で快適にしてくれる設備ですが、利用方法を誤ったり、エレベーターに異常が生じていたりすると、思わぬ事故が起きることもあります。
そこでここでは、エレベーター内で発生した事故の事例をご紹介します。
【事故事例1】エレベーターの扉に子どもが手を挟んだ事故
エレベーター事故の中でも特に発生頻度が高いのが、扉に手を挟む事故です。
2歳の子どもがスーパーマーケットのエレベーターから降りようとしたところ、扉が閉まり手の指が3本挟まれました。診察では骨に異常はなかったとのことですが、指は腫れ上がっていたといいます。
【事故事例2】ペットのリードが挟まれたまま上昇し、飼い主の指が切断された事故
この事故は、ペットの犬と一緒にエレベーターに乗っていた女性の身に起こりました。
犬がエレベーターの扉から出て外へ飛び出してしまった直後に扉が閉まり、エレベーターはそのまま上昇。女性はリードを自分の手の指に何重にも巻き付けていたために、指が切断されてしまいました。
【事故事例3】乗降中にエレベーターが突然上昇し、体を挟まれ死亡した事故
最後にご紹介する事故事例は、平成18年に起きた死亡事故の事例です。
高校生が自身の居住するマンションのエレベーターで、自転車を引きながら後ろ向きに降りようとしたところ、まだ扉が閉まっていないにも関わらず、突然エレベーターが上昇。高校生はエレベーターの床とエレベーター乗降口の天井との間に体を挟まれました。
同乗していた女性がエレベーター内の非常ボタンを押し、救急隊やレスキュー隊が駆けつけて高校生は病院へ搬送されましたが、胸部圧迫による窒息で死亡が確認されました。
事故を防ぐ安全対策
エレベーターには、このような事故を避けるためさまざまな安全対策が施されています。
ここでは、代表的な安全装置を3つご紹介します。
セーフティシュー
セーフティシューとは、エレベーターの内側の扉と外側の扉の間に設置されている、扉への挟まりを防ぐ安全装置のことです。
身体や荷物など、何らかの“モノ”がセーフティシューに触れると、扉が自動で開くようになっています。そのため、セーフティシューが正常に働いていれば、体全体が扉に挟まれるといったことはまずありません。
ただし、セーフティシュー以外の部分、たとえば外側の扉だけに手が触れている場合はセーフティシューには触れていないため、そのまま扉が閉まってしまいます。つまりセーフティシューが正常に働いていても、【事故事例1】のように手などの体の一部や、衣服・荷物などが挟まれる可能性はあります。
また、セーフティシューは柔らかくて細い素材も感知しないことがあります。【事故事例2】で犬のリードが挟まったままエレベーターが動いたのは、恐らくこのためでしょう。リードと同様に、ポシェットのひもやマフラーなどが扉に挟まった場合も、同じ事故が起こりえます。
戸開走行保護装置
戸開走行保護装置とは、停止位置が著しくずれた場合や、出入口が完全に閉まる前にエレベーターが動き出した場合などに、自動的にエレベーターを停止させる装置のことです。
この戸開走行保護装置は、平成21年に安全対策として設置が義務化されました。そのため、平成21年以降に設置されたエレベーターには必ず、組み込まれている装置です。
この装置のおかげで、エレベーターの乗降場所でないところで扉が開いてしまったり、【事故事例3】のように扉が開いた状態でエレベーターが動いてしまったりといった危険な状態になる可能性が大幅に減りました。
地震時管制運転装置
地震時管制運転装置とは、地震が発生した際に初期微動を感知し、本震の前に最寄り階へ自動運転することで乗客の閉じ込めを防ぐ装置のことです。
最寄り階への到着前に本震を感知した場合には、緊急停止を行いますが、一定時間が経過後問題なければ自動的に運転が再開されます。
東日本大震災以降、震災時の安全対策は非常に重要視されています。この地震時管制運転装置は、震災時のエレベーター閉じ込めを未然に防ぐ、重要な安全装置だといえるでしょう。
事故を回避するための注意点
エレベーターには上述のような安全対策の仕組みがありますが、事故にあわないためには利用者側にも注意すべきポイントがあります。
簡単にできる注意ポイントとして、「エレベーターに異常を感じたら利用を止め、管理者に連絡するということ」があります。
普段利用しているエレベーターであれば、いつもと違う状況に気づきやすいものです。そのまま利用するなどして異常を放置しておくと、事故の原因になる可能性があります。自分のためにも次の利用者のためにも、忘れずに連絡しましょう。
エレベーターに乗る際には慌てず、エレベーターのなかを確認することも大切です。扉が閉まりかけているからと急いで乗ろうとすると、セーフティシューが反応しない場所で手や身体を挟まれる可能性があります。
また、先ほどもご紹介した通り、洋服の紐などは扉に挟んでもセーフティシューが反応しません。そのままエレベーターが動き出して大惨事を引き起こすこともあります。このような事態を防ぐためにも、エレベーターを利用する際は焦って駆け込んだりせず、余裕を持って乗り降りしましょう。
まとめ
今回はエレベーターを安全に利用するために知っておきたい、エレベーターの仕組みや事故事例などをご紹介しました。
エレベーターはお買い物などの日常生活を便利にしてくれる設備ですが、危険な利用方法やエレベーターの不具合によって思わぬ事故が発生することもあります。エレベーターを利用する際は、エレベーターについている安全対策に甘んじず、自分で注意することも心掛けましょう。