買い物中に火災にあったらどうすればいい?避難のポイントや火災事例
2020.02.10買い物中の事故・災害2018年現在、火災の発生件数は年間37,981件で、単純計算で1日に104件発生しているといえます。
災害や事故、放火など発生理由はさまざまで、発生件数を考えれば買い物中に火災が発生しないとはいえません。そのため、買い物中に火災が発生した際の対応についても、考えておく必要があります。
以下では、火災の危険性や遭遇した際の対策についてご紹介します。
火災で気をつけるべきは「煙」
火災と聞いて最も怖いものは炎だとイメージする方も多いかもしれませんが、近年は建物に使われている建材の素材が変わったことや、プラスチック製品が増えたことなどから、火災における煙の危険性が高まっています。新建材やプラスチック製品が燃えることで有害なガスが発生し、そのガスが含まれた煙もまた非常に危険なのです。
特に危険なのは一酸化炭素
なかでも特に危険なのは、一酸化炭素。火災での焼死者の大半は、一酸化炭素中毒によって意識不明になったところを炎に襲われたものと見られています。
一酸化炭素は、少量でも身体にさまざまな異常をきたします。空気中の濃度が0.02%の場合、2~3時間で軽い頭痛がします。0.04%になると1~2時間で頭痛や吐き気がするようになり、0.08%になると45分でめまいや痙攣を起こします。より高濃度になると致死の可能性があり、0.16%では2時間、0.32%では30分、0.64%では5~15分、1.28%では1~3分で死に至ります。
こうしたことから火災に見舞われた際には、煙を吸い込まないことが命を守るための重要な対策となります。
商業施設での火災事例
ここでは、実際にあった商業施設での火災事例を見ていきましょう。
熊本県のデパート火災
1973年11月、熊本県内のあるデパートで死者103名、負傷者121名を出した火災が起こりました。この火災は戦前戦後含めて最大規模のものです。
当時営業をしながら増築工事を並行して進めていたために、防火管理体制や防火設備を万全にできなかったことで、被害が拡大したとされています。
またこの火災と1972年に大阪で起こったデパートビル大規模な火災がきっかけとなり、建築基準法と消防法の大幅な改正がされました。
兵庫県のスーパー火災
1990年3月、兵庫県内のある5階建てスーパーの4階にあった寝具・インテリア売場から出火し、客3名従業員12名の計15名が死亡する火災が起きました。
4階で火災が起こったとき、売場にあった化学繊維の商品が燃えて有毒物質が放出され、そのあと煙はまたたく間に5階へと回りました。結果として実際に焼損した4階ではなく、5階にいた15名が、炎ではなく「充満した煙による一酸化炭素中毒」で亡くなったことが大きな特徴です。
5階部分は全く延焼していなかったことから、火の手よりも煙が回る速度の方が速いことが分かります。
もしも買い物中に火災を発見したら
火災は発見から迅速に初期対応できるかで被害の規模が大きく変わります。外出中に火災を発見した場合、どのような行動を取れば良いのでしょうか。
火災を発見したらすぐに周囲に知らせる
炎や煙を発見したら最初にする行動は、周囲へ火事を知らせることです。大声で「火事だ!」と叫び、大きな声が出せない場合は火災報知器や非常ベルを押したり、大きな物音を立てたりして非常事態であることを従業員や近くにいる人に伝えましょう。
知っておくと安心。消火器の使い方などの消火方法
基本的には従業員が消火対応するべきですが、一刻を争う事態の場合は従業員の到着を待たずに消火対応することが求められます。
しかし、実際に消火活動の経験がある方は多くないと思われるため、消火器を使うときの手順や消火活動時の注意点などについてご紹介します。
●消火器の使い方
- 火災現場の近くまで消火器を持ってきます。おおむね炎から7~8メートル離れた場所が適切で、近すぎると危険ですし遠すぎても薬剤が届きません。また、消火器はどこにもぶつけないように気をつけてください。
- 黄色の安全ピンを抜きます。
- 消火器のホースを外し、先端を持って炎に向けます。
- レバーを強く握り薬剤を放出します。
- 消火時は火の根元を狙うことが重要です。ほうきでの掃除をイメージして、手前から奥へと消火を進めます。
●注意点
自身が炎による被害を受けないよう、消化する際は風上から行いましょう。
また、消火器の放射時間は種類によって異なります。粉末消火器ではおよそ15秒、強化液消火器ではおよそ30秒~70秒が目安です。
外出先で火災にあったときの避難のポイント
災害や事故などさまざまな理由から、外出先で火災に見舞われる可能性はあります。そんなときに慌てず動くためには、事前にどういった対応をするのか、安全対策をしっかりと確認しておくことが大切です。
落ち着いて従業員や警備員の避難指示に従う
避難においてまず心がけるべきは、避難誘導の指示にしっかりと従うということです。外出先で災害に見舞われると、パニックに陥ることが多くあります。やみくもに逃げ回っていると、助かるものも助かりません。施設にはあらかじめ避難経路が用意されているため、落ち着いて従業員や警備員の方の指示に従いましょう。
煙を吸い込まないようにする
上述したように、避難をする際は煙を吸い込まないことが大切です。ハンカチなどで口や鼻を覆うのはもちろん、煙の特性について知っておく必要があります。
煙の拡散速度は、横への移動は毎秒0.3m~0.8m程度、縦への移動は毎秒3m~5mとなっており、あっという間に口や鼻付近に到達してしまいます。また、煙は天井から溜まっていくため、床付近になると空気の層が残ります。
この煙の特性を踏まえると、できるだけ上の階へは逃げず、姿勢を低くしてできるだけ煙が薄いところを進んでいくことが重要だと分かります。
避難口が分からない場合は壁づたいに移動を
煙には不純物が多く含まれ、黒い煙が充満すると視界不良になり避難口が見えにくいことがあります。避難口が分からない場合は、誘導灯に従って壁伝いに移動しましょう。壁に沿って歩けば避難口が分からなくても方向感覚を失わずに確実に進むことができます。
エレベーターやエスカレーターの利用は避ける
火災時にはエレベーターやエスカレーターの使用は厳禁です。乗った際には正常に作動していたとしても、乗っている最中に火災の影響で停電してエレベーターやエスカレーターが止まる可能性があるためです。
エレベーターは途中階で停止して閉じ込められてしまう可能性もありますし、火災が発生している階に止まる可能性もあります。エスカレーターが急停止すると転倒や将棋倒しが起こり、怪我をしてしまうかもしれません。
エレベーターに乗っているときに火災が起きた場合は全階のボタンを押し、もしも中に閉じ込められた場合はインターホンで外部に連絡を取りましょう。
まとめ
買い物中に火災にあった場合、避難経路や建物の構造などをよく知らない場合がほとんどのため、どこからどのように避難すれば良いのか分からずパニックに陥ってしまう可能性も高いことでしょう。煙を避けるためにハンカチなどで口や鼻を押さえて姿勢を低くする、エレベーターを使わないなどの避難の基本を守りながら、従業員の避難指示に従って行動することが最善です。
実際に火災に巻き込まれた際に落ち着いて避難できるよう、安全対策はしっかりと覚えておきましょう。