ユニバーサルデザインとは?身近にある具体例や店舗で導入する際のポイント
2022.01.24店舗運営者向け誰もが快適に利用できるデザインや環境を示す、「ユニバーサルデザイン」という言葉をご存じでしょうか。私たちの生活のなかには多くのユニバーサルデザインが溶け込んでいますが、具体的な内容を理解している人は多くないかもしれません。
近年はライフスタイルの多様化により、店舗に訪れる利用客のニーズにも変化が見受けられます。そのため、顧客が求めているものに対して理解を深め、より良い環境を提供できるようにする必要があるといえるでしょう。
この記事では、ユニバーサルデザインとは何かといった基礎知識から、街中で見かける具体例や導入におけるポイントを解説しています。環境改善を検討している企業様・店舗様などはぜひ参考にしてください。
ユニバーサルデザインとは?
ユニバーサルデザインとは、アメリカのロナルド・メイス博士を中心に提唱されたデザインについての考え方です。あらゆる状況において、誰でもが使いやすい建物や環境などをデザインすることを意味します。
理想的なユニバーサルデザインを実現するために設けられた、「ユニバーサルデザインにおける7原則」という指針があり、この7原則をもとにデザインが行うことが推奨されています。
ここでは、ユニバーサルデザインにおける7原則の内容や、よく似ている言葉として知られている「バリアフリー」との違いについて解説します。
ユニバーサルデザインにおける7原則
誰でも利用しやすい建物や環境をデザインするには、技術的要素や経済的要素など、使いやすさ以外のことにも配慮する必要があります。すべての人の要望をかなえられるデザインを実現するには、「ユニバーサルデザイン7原則」の具体的な内容を把握し、その必要性を理解しておくことが重要です。
【ユニバーサルデザイン7原則】
- 誰にでも利用できる「公平性」
- あらゆる人の能力や好みに合う「自由度の高さ」
- 簡単で直感的に利用できる「単純性」
- 誰でも必要な情報が理解しやすい「わかりやすさ」
- ミスや危険につながらない「安全性」
- 効率良く省体力で利用できる「負担の軽さ」
- どのような状況でも大きさやスペースが確保できる「空間性」
バリアフリーとの違い
ユニバーサルデザインと混同されやすい言葉として「バリアフリー」が挙げられますが、この2つの言葉が示す意味合いは異なります。
バリアフリーはもともと住宅建築用語であり、物理的な障壁(バリア)になりうるものを除去することを意味する言葉です。障害者や高齢者など、特定の人を対象とした場面などで使われます。
一方で、幅広い人を対象とした意味合いを持つユニバーサルデザインは、障害の有無や性別、年齢などに関係なく、誰でも使いやすいという意味が込められています。
バリアフリーについては、以下の記事でより詳しく解説しているので、こちらも参考にしてください。
店舗のバリアフリーとは?バリアフリーを考えた店舗作りのポイント | 売場の安全.net
ユニバーサルデザインが求められる背景
ユニバーサルデザインが推進されている背景には、少子高齢化や障害者の増加、女性の雇用数の増加など、時代の移り変わりによる環境の変化が挙げられます。その他、就労目的や観光で訪れる外国人が増え、国際化が進んでいることも背景のひとつといえるでしょう。
このようなライフスタイルの多様化にともない、誰もが利用しやすい設備や環境が必要になってきたと考えられます。
身近にあるユニバーサルデザインの具体例
ユニバーサルデザインは日常に溶け込むように設計されており、実は気付かないうちに多くの人がその利便性を体験しています。ここでは、日常生活のなかで無意識のうちに利用していると考えられるユニバーサルデザインの具体例をご紹介します。
自動ドア
商業施設やマンションなどあらゆる場所に設置されている自動ドアは、ドアを開けるだけの力がない方や車いすを利用している方でもスムーズに利用できる設備です。子供を抱えている場合や両手がふさがっている場合など、健常者にとっても日常を支える大きな存在といえるでしょう。
多機能トイレ
これまでの多機能トイレといえば、車いすの利用者など障害者向けのイメージがありましたが、現在では一般向けのトイレでもユニバーサルデザインが採用されるようになりました。例えば、収納式のベビーシートや低い位置で利用できる洗面台など、どのような人でも利用しやすい環境が整っています。
ピクトグラム
文字を使わずに情報を伝達できるピクトグラムは、言語を問わず情報を伝えられ、利用する側もどういった場所なのか、どういった意味なのかを理解しやすい絵記号です。商業施設や交通施設など、あらゆる場所で利用されており、国籍や年齢などの違いに左右されない特徴があります。
点字ブロック
点字ブロックがあれば、視覚障害を持っていても自身の足で目的地を目指せます。複雑な駅構内や通路変更がともなう場合でも、迷わずに目的地を目指せるようになります。
駐車場や歩道から店舗の入口までの通路に、点字ブロックが設置されている店舗もあるのではないでしょうか。
階段のスロープ
スロープが設置されていることで、車いすの利用者や足腰への負担が心配な高齢者の方でも、快適に移動できます。車いすだけでなく、ベビーカーを利用している場合も同様です。階段では持ち上げて移動する必要があるため、スロープの設置による利便性の向上は非常に大きいといえるでしょう。
電車内の優先スペース
座席が設置されていない優先スペースは、車いすやベビーカーのみならずスーツケース・キャリーバッグを持って移動している旅行者にとっても助かる環境です。
店舗におけるユニバーサルデザイン
どのような利用客にとっても快適な環境を整えるためには、利用客が求めていることについて理解を深めるとともに、安心・安全を提供する必要があるでしょう。ここでは、店舗側が行うユニバーサルデザインの具体例について解説するので、積極的に取り入れられるよう心がけてみてください。
お客様の要望に応えられる店舗
店舗に訪れる利用客は、食物アレルギーを持っていたり体が不自由だったりと、外見だけでは判断できない事情を抱えている可能性が考えられます。どのような人でも快適に利用できる店舗を目指すためには、利用客それぞれの事情をくみ取り、要望に応えられるシステムや設備・体制を整える必要があるでしょう。
多種多様なコミュニケーションが取れる店舗
視覚障害や聴覚障害など、コミュニケーションの取り方に工夫が必要な利用客への配慮も必要です。また、国際化の影響により、国外からの訪問客はこれからも増加すると考えられます。そのため、筆談や点字、外国語対応など、あらゆるコミュニケーションを可能にする店舗作りが求められるでしょう。
商品表示などがわかりやすい店舗
高齢者や外国人が利用することを考慮し、店内案内や看板、チラシなどは誰が見ても理解しやすいものを用意することが重要です。内容が見づらい・わかりづらいという状況を排除することで、快適に利用できるだけでなく、トラブルの防止にもつながります。
バリアがない店舗
広い入口や段差を排除した店内などは、車いすやベビーカーを利用する人にとっても、そうでない人にとっても快適といえる要素です。店内移動や入店の際に支障をきたすことのない店舗作りを心がけ、誰もが快適に利用できる環境を整える必要があるでしょう。
援助が整った店舗
利用客のなかには、障害を持った人や日本に慣れていない外国人など、人の援助が必要な場合があることを理解しておかなければなりません。時間のかかりそうな利用客でも急かすことなく安全に利用できたり、段差のある場所でのサポートを行ったりと、利用客の不安材料を作らない環境を整えることが理想です。
安全性の高い商品陳列
高所への陳列や過剰陳列は、利用客のカバンがぶつかったり地震が起こったりした際の危険性が高まります。また、割れ物や重量物を陳列する際には落下対策を行い、利用客や従業員が負傷しないように注意しなければなりません。
安全な商品の陳列については、以下の記事でより詳しく解説しているので、こちらも参考にしてください。
陳列の基本を学ぼう!安全な商品陳列の仕方とは | 売場の安全.net
まとめ
ユニバーサルデザインを多く取り入れることで、さまざまな人が快適に利用できる環境を整えることが可能です。すでにあらゆる場面で採用されてはいますが、まだ十分に配慮されていない場所もあります。
何らかのサポートを必要とする人が、快適に利用できていない状況があるのであれば、適切に利用できるような気配りやデザインが必要です。
ユニバーサルデザインの需要は今後も高まると予想されるため、これまで以上に理解を深め、あらゆる立場の人が快適に利用できる環境作りを目指しましょう。