自動ドアの事故はどこで起こる?危険性を把握して安全対策に活かそう
2018.09.10売場の危険な場所さまざまな店舗の入り口に設置されている自動ドア。お客様にとっては便利な存在であり、店舗側としてもセキュリティや衛生管理に一役買ってくれる大切な存在ではありますが、実はこの自動ドアが原因で起きてしまっている事故も少なくありません。
今回は、そんな自動ドアの事故についてご紹介します。安全な店舗にするために、どのような事故が起きる可能性があるのか、また施すべき安全対策について把握しておきましょう。
自動ドアで起こりうる事故の種類
自動ドアの周辺で起きる事故には、以下のような種類のものがあります。
駆け込みによる衝突
急いで走ってきた人が、まだ開ききっていない自動ドア、もしくは閉じかけている自動ドアに衝突してしまう。
斜め進入による接触
閉じかけている自動ドアに対して、正面からではなく斜め方向から入ろうとしたためにセンサーが進入者を認識するのが遅れた結果、自動ドアが閉じる動作から開く動作へ切り替わるのが遅れ、十分に開いていない状態の自動ドアに斜め進入者が接触してしまう。
戸袋侵入による衝突
自動ドアの戸袋(開いたドアが収納されるスペース)付近に侵入して遊んでいた子どもに、開いてきた自動ドアが衝突してしまう。
立ち止まりによる挟まれ事故
自動ドア走行部(床に溝が設置されている部分)で立ち止まっていて、閉じてきた自動ドアに挟まれてしまう。
ドアのすき間での手指挟まれ事故
自動ドアや戸袋に手をついていたときに自動ドアが開閉を始めたことで、ドアと戸袋部分のすき間に手や指を挟まれてしまう。
上記のような事故が、自動ドアの付近で頻繁に発生しています。このような自動ドアによる事故でけがをするのは、特に幼い子どもや高齢者の方に多くみられます。そのため、老若男女問わず多くのお客様がいらっしゃる店舗では、特に自動ドアの安全対策が必要だといえるでしょう。
自動ドアの事故事例
ここでは、実際に発生した自動ドアの事故事例を3つご紹介します。
【事例1】開閉中の自動ドアへの接触による、衝突事故
1つ目にご紹介する事例は、飲食店の出入り口の自動ドアで発生した事故です。
70代の男性が出入り口を通る際に自動ドアに右腕をぶつけ、痛みを感じていました。そこで翌日病院へ行ったところ、筋肉の損傷があると医師よりいわれたとのことです。
【事例2】自動ドアの不具合が原因とみられる、挟まれ事故
2つ目は、娯楽施設の出入り口の自動ドア付近で起きた事故の事例です。
60代の女性が自動ドアから入店しようとしたところ、急に自動ドアが閉まり、体が挟まれて転倒。女性は左手首を複雑骨折と診断されたそうです。
【事例3】閉じかけた自動ドア付近で発生した、転倒事故
最後にご紹介する事例は、スーパーの出入り口の自動ドア付近で起きた転倒事故の事例です。
80代の女性が前を歩くお客様に続いて入店しようしたところ、閉じかけている自動ドアに接触。女性はそのまま転倒し、骨折と診断されました。
自動ドアの事故後に考えられる影響
1つ目と2つ目の事故事例については、事故の被害者となったお客様はもう二度と来店しない可能性が高いといえるでしょう。これは、事故現場を見たり通ったりすることで、けがをしたときの恐怖や不快感を思い出してしまうことがあるためです。
加えて、「あの店の自動ドアでけがをした」「事故後の店舗側の対応もひどかった」などの話を被害者の方が家族や友人にした場合、そういった噂がどんどんと広まっていき、「あの店はお客の安全をないがしろにしている悪い店だ」などといわれ、地域での評判が悪くなることも考えられます。結果的に来店者数や売上金額などに響いてくることも、考えられなくはないでしょう。
3つ目の事故後の話はもっと深刻です。実は、もともと認知症と診断されていた女性の痴呆症状が転倒事故での骨折によってさらに進んだとして、女性の家族による損害賠償請求が行われたのです。裁判では訴えの一部が認められ、スーパー側に1,000万円超の支払いが命じられました。
これはやや特殊なケースではありますが、このような事故・裁判が起こる可能性はどのような店舗でもあります。
自動ドアの危険な事故を予防するための安全対策
では、自動ドアによる事故の発生を予防するためには、どうすれば良いのでしょうか。上記でご紹介したような事故の発生を予防し、安心して店舗に来店してもらうためには2つの対策をとることが必要です。
【対策1】自動ドアの仕様を確認し、調整をする
まずは、店舗に設置されている自動ドアの仕様を確認しましょう。その際には必ず、補助光電センサーの設置と開閉速度の調整、そして開放タイマーの時間調整も行ってください。
自動ドアは、ドアの上部についているセンサーがドア周辺の人や物を感知して開くようになっています。自動ドアが開閉する走行部はそのセンサーの範囲外であるため、補助光電センサーが設置され、走行部に人がいないかどうかを検出しています。
しかし、費用等の問題から、この補助光電センサーが取り付けられていない自動ドアもあります。補助光電センサーが設置されていない場合は、きちんと設置することが望ましいです。
補助光電センサーを新たに設置する場合は、垂直方向に複数個の補助光電センサーを設置しましょう。上部のセンサーと補助光電センサーを使用して、不感知になってしまう部分を可能な限り減らすことが大切です。なお、不感知部分が自動ドアから15cm以内に収まるように設置しましょう。
開閉速度や開放タイマーの時間設定については、病院や役所などの公共施設にならって設定することをおすすめします。開く速度を適切に遅くし、閉まる速度は開く速度よりも遅く設定し、開放タイマーはできるだけ長く設定するのが良いとされています。
全国自動ドア協会が定める「自動ドア安全ガイドライン」では、病院や公共施設では、自動ドアが開く速度は400mm/秒以下、閉まる速度は250mm/秒以下に設定することが推奨されています。開放タイマーの設定に関しては、秒数は指定されておらず「可能な限り長く」とすすめられています。
自動ドアの開閉速度と開放タイマーの時間設定は、センサーの種類や検出範囲などの条件によって適切な設定が変わってきます。しっかりと自動ドアの仕様の確認を行ってから、各機能の調節を行うことが大切です。
【対策2】店舗内でお客様に対する注意喚起をする
自動ドアの仕様確認と調整を行い、安全対策を施したら、店舗での注意喚起にも目を向けてください。
多くの自動ドアにすでに貼られているかと思いますが、お客様が自動ドア付近で立ち止まったり衝突したりすることのないように、自動ドア自体に危険を知らせるステッカーなどを貼り付けましょう。色あせていたり、分かりにくい位置に貼られていたりする場合は、新しいステッカーを用意して貼り直しすることをおすすめします。
その他、可能であれば「自動ドアの付近では立ち止まることのないようにお願いいたします」などのアナウンス音声がドア付近で流れるようにしても良いでしょう。
このように自動ドア付近に掲示物を貼ったりアナウンスを流したりするなどの工夫で、自動ドアの危険な事故を予防し、店舗の安全性を高めることができます。
まとめ
数多くの店舗に設置されている自動ドアですが、その周辺ではさまざまな事故が起きてしまう危険性があります。どのような事故が起こりうるのかを知り、自動ドアの設定を適切に調整しておくことで、事故の予防につなげましょう。
その他、自動ドア付近での注意喚起も適宜行うことによって安全のための対策を十分に行い、来店される方が気持ち良く安全に過ごせるように配慮することが大切です。